犬の社会化とは?

コミュニケーションをとっている犬
犬の社会化とは、その犬を取り巻く環境のあらゆる物事に対して、柔軟に対応できる力を育むことを指します。
もともと犬は社会性の強い動物であり、犬の群れのなかで親犬や兄弟犬、周囲の犬たちにより社会化が促されます。
ペットの犬を、犬社会だけでなく人間社会にも適応できるよう飼い主が育てていくことも、犬の社会化に含まれます。

犬の社会化は生涯を通じて維持されていくものですが、生後3週間から12、13週間までの期間に大きく獲得されます。この時期を「社会化期」と呼び、犬の社会性を育む重要な時期と考えられています。
犬の13週齢以降の心身の成長は社会化期に獲得した能力が土台となるため、この時期の過ごし方が、犬の生涯の幸福にかかわってくるといえます。

犬が社会化不足になるとどうなる?

唸る犬
犬の「社会化不足」とは、人間やほかの犬、環境に慣れる経験が不足している状態を指します。
社会化不足の犬は不慣れな対象に不安や恐怖を感じ、攻撃的になったり、神経質な反応を見せたりします。
次のような問題行動は、社会化不足を原因とする可能性があります。

社会化不足による問題行動

  • 人やほかの動物に対して、攻撃的になったり怯えたりする
  • 散歩中にほかの犬に出会うといきなり吠えかかる
  • 外の環境に慣れておらず「逃げたい」という気持ちから、散歩時にリードを引っ張ってしまう。逆に固まってしまい動けなくなる
  • 力加減をすることなく、人やほかの犬、動物を咬む
  • インターホンや掃除機の音、楽器や家電の電子音、電話の音などの生活音に過剰に反応する
  • 散歩中にすれ違う自動車やバイク、自転車、踏切での電車の通過などに過剰に反応する
  • 旅行やお出かけなど、慣れない環境下でパニックになる
  • ケージやサークルに引きこもり、こっそり隠れるように食事をする
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成犬になっても遅くない! 社会化不足の治し方

散歩中の犬
社会化期を逸してしまい、問題行動を起こすようになった愛犬でも、諦めることはありません。
成犬になっても、社会化を促すことは可能です。

さまざまなモノやコトに慣れさせる

社会化不足による問題行動が起こる原因は「経験不足」。
経験のない出来事や不慣れな環境に置かれると、犬は先の予測ができず、不安になります。
子犬の社会化期にさまざまな事象や環境に慣れさせるのは効果的ですが、成犬になってからでも遅くはありません。
愛犬のペースに合わせて少しずつ、多くの経験をさせ、外に連れ出しましょう。
その経験をポジティブな記憶とするために、おやつを使うのも有効です。

犬社会について学ぶ機会をつくってあげる

犬は社会性の強い動物であり、人とは異なるコミュニケーションやルールで犬社会を築いています。
飼い主が代わりに教えることは困難ですが、ほかの犬との交流を通じて犬社会でのコミュニケーションやルールを学ぶことは可能です。

愛犬の社会化不足を感じたら、日常の散歩やドッグランで出会うほかの犬を通じて、犬社会を学ぶ機会を与えましょう。
この際、散歩中にいきなり犬同士を近づけたり、ドッグランでノーリードにしたりするのはいけません。
愛犬がほかの犬にとびかかってケガをさせる可能性や、問題行動が悪化してしまう場合があります。
あまり体格の変わらない、落ち着いた性格の犬と飼い主さんに協力を仰いで、遠くから少しずつ距離を詰めていくような交流を増やしていきましょう。

また、ドッグランで多くの犬に囲まれてしまうと、パニックになりがちです。
はじめのうちは利用者が少ない時間帯を選び、まずはフェンス外からリードをつけたままで、ほかの犬の様子を愛犬に見せてあげましょう。
愛犬が環境に慣れ、状況を理解した様子を見計らって、リードを付けたままフィールド内に入るようにします。
上手にあいさつができるようになるまで、リードは外さず持っておきましょう。
愛犬が緊張しているようなら、焦らず静かに引き離して、愛犬を十分に落ち着かせてください。

家族以外の人とも交流させる

家族以外の人間を信用していない犬は、他人に向かって吠えたり咬んだりすることがあります。
庭や室内など自分のテリトリーに入ってきた人ばかりでなく、外で出会う人にいきなり吠えかかるのは問題行動といえます。

こうした状況を改善させるには、家族以外の人と触れ合う時間を作ることが必要です。
協力してくれる人にお願いして、優しく声をかけてもらう、おやつを与えてもらう、撫でてもらうなど、無理のない範囲で少しずつ他人に慣らしていきましょう。

この際、愛犬の目を見つめながら近づく、愛犬が避けるのに触ろうとするのはNG行為。犬が不安や不快な気持ちから、吠えかかってしまうことがあります。
相手の人には犬を気にしすぎることなく過ごしてもらい、愛犬が穏やかになったときに歩み寄ってもらいましょう。タイミングを見計らって人が反応するのが大切です。

社会化トレーニングを成功させるコツ

無理強いしない

愛犬が嫌がっていたり飽きていたりした場合、無理にトレーニングを続けてはいけません。
かえって愛犬の好ましくない反応を引き出してしまい、さらに問題行動が悪化する可能性が高まります。
そのタイミングでは難しいと思ったら、すぐに中止して愛犬を落ち着かせ、十分に時間を置いて改めてトライしましょう。

焦らない

成犬は社会化期の子犬と異なり、白紙に文字を書き込むように素直な受け止めはできません。
これまでのネガティブな経験の積み重ねが壁になっているため、一つひとつの物事を乗り越えるには時間がかかります。
もし社会化のトレーニングがうまくいかず飼い主が怒ったり怒鳴ったりすると、さらにネガティブな経験が上書きされてしまい逆効果です。
飼い主は決して焦らず、少しずつ段階を踏んでゆっくりと、気長に見守りながら社会化を進めることが重要です。

プロの手を借りることも検討する

「社会化不足」と一口にいっても、その度合いは犬によって千差万別。問題の大きさや内容は犬ごとに異なるため、適切な対応も違ってきます。
飼い主だけの力ではうまくいかないとき、行き詰ったときはトレーナーの力を借りるのもよいでしょう。
トレーナーは犬の性格や状態を見極めたうえで、飼い主が見逃していた愛犬の反応をキャッチし、具体的なアドバイスや役立つテクニックを用いてトレーニングを進めてくれるはずです。
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まとめ

犬の社会化と社会化不足の治し方について、基本的なことを中心に解説してきました。
攻撃したり怯えたり、散歩も落ち着いてできないなど、社会化不足のままでは犬自身の幸福度も下がってしまいます。
飼い主に笑顔とよろこびをくれる愛犬を幸せにしたいなら、子犬のころからしっかりと社会化を促しましょう。
成犬になって迎えた場合も、無理なく、しかし諦めることなく、じっくりと社会化に取り組んでください。