社会化期とは? いつからいつまでの時期を指す?

子犬同士遊ぶブルドッグ
犬の社会化とは、犬社会と人間社会のあらゆる物事に対して柔軟に対応していく力を育むことをいいます。犬種での差や個体差は多少ありますが、おおよそ生後3~12、13週齢までを社会化期と呼んでいます。

この時期の子犬は、はじめは母犬やきょうだい犬と、その後は家族となる人たちを中心に人間たちとのコミュニケーションを通し、外の世界に順応するためのさまざまなことを吸収していきます。
社会化期をどのように過ごすかは犬の性格形成の面から見ても重要であり、外界のあらゆるものを受け入れるための大切な期間です。

現在、出生後56日を経過していない子犬の販売は動物愛護法で禁じられています。

犬を家族に迎え入れたタイミングが遅く、すでに社会化期が終わっていた、というパターンも多く考えられるでしょう。しかし、早くに母犬と引き離されることが及ぼす悪影響に比べると、さほど大きな問題ではなく、この時期を過ぎたからといって社会化が不可能なわけではありません。

理想の社会化パターン

子犬は産まれたあと、親犬やきょうだい犬などとの遊びを通して、さまざまなことを学んでいます。犬同士でのコミュニケーションのとり方なども、このときに学ぶといわれています。
先に犬同士でのルールを身に付けてから人間の社会に迎え入れることで、周囲への順応がスムーズにいくとされています。

犬社会のルールを覚える(前半)

生後3~7、8週齢くらいまでは、母犬やきょうだい犬と触れ合いながら犬社会のルールやコミュニケーション方法を学びます。

代表的なのは、犬同士のあいさつやじゃれ合い方、噛むときの力加減などです。母犬たちと過ごすことで、犬社会での大切なことを身をもって経験します。

人間社会に慣れさせる(後半)

生後8週齢以降からは飼い主さんとなる人とともに過ごし、一緒に遊んだり、人間の生活に慣れさせたりすることで、人間社会に順応していけるような社会性を養っていきます。

代表的なのは、見慣れないものや聞き慣れない音、さまざまな人、身に着けるものなどに慣れていくことです。

人間社会にははじめてのことがたくさんあります。「慣れさせる」とはいえ、決して無理強いして慣れさせるわけではありません。犬自身がそのものを受け入れた結果、「慣れる」という考えをもつことが大切です。

社会化におこないたい「慣らし」が不足するとどうなるのか

トイプードルの子犬
社会化期は子犬自身が大きな好奇心をもっている時期です。見たもの、聞こえたもの、触れたものをどんどん吸収し、学んでいきます。

これに対し、社会化期が終わるころから少しずつ警戒心も芽生えてきます。
すぐに警戒心が芽を出すわけではありません。個体差もあり、一概には言えませんが、生後半年くらいで警戒心が好奇心を上回るケースが多いといわれています。

警戒心が目立つようになると、はじめてのものを柔軟に受け入れていくことが難しくなります。聞き慣れない音に対して極端に怯えたり、見慣れないものを見て後ずさりしたり、場合によっては防衛本能から攻撃的になる場合もあります。

とはいえ、このような時期でも新しいことを受け入れられないわけではありません。受け入れられるようになるまでのステップを細かく設定し、様子を見ながら少しずつ慣らしていくようにしましょう。

子犬の社会化トレーニング方法

抱っこで散歩する柴犬

1.環境に慣れさせる

まずは家の中にあるいろいろなものに慣れさせます。とくに日常的に利用する、動いたり音が出たりするもの(掃除機や洗濯機、ドライヤーなど)は、意識的に慣れさせていくとよいでしょう。

いきなり音を出して動かすと驚いてしまう場合もあります。最初は、動かさずに音だけ、または、音なしで動かすだけなど、段階を踏んで少しずつ経験させていくのがポイントです。
 
家の中にあるものに慣れてきたら、次は、外の環境にも少しずつ慣れさせていきます。
ほかの犬の鳴き声、サイレンや踏切の音、目の前を通過する大きなトラックなど、外へ出るとはじめて見聞きするさまざまな刺激があります。

地面に下ろして散歩デビューができるまでの間は、抱っこやカートに乗せての散歩で、外にあるいろいろなものに慣れていきましょう。
はじめて経験させるときは対象物との距離も気にかけてください。基本的には、最初は遠目から。大丈夫そうであれば徐々に近づいてみる、という方法が効果的です。

2.人に慣れさせる

飼い主さんやその家族に慣れてもらうのはもちろんのこと、友人、動物病院の先生や看護師さんなど、家族以外の人にも会わせる機会を積極的に設けてみましょう。

外に出れば、眼鏡をかけている人や帽子を被っている人、マスクをした人など、さまざまな風貌の人たちに出会うはずです。
子犬に興味を示して近づいてくる人がいた際は、まずは一人ずつ短時間で接してもらうようにします。可能であれば、おやつをあげてもらうのもおすすめです。

ただし、子犬が極端に興奮したり、怖がったりしているようなら、離れてもらうようにしましょう。

3.身に着けるもの・触れるものに慣れさせる

首輪、リード、ブラッシングブラシ、歯ブラシなど、子犬が身に着けたり、触れたりするものであれば、これも少しずつ慣れてもらうようにしましょう。一気に慣れさせようとせず、子犬への負担を考え、できるだけ短時間から経験させるのがコツです。

とくに首輪やリードは、地面に下ろしての散歩デビュー時にはじめて装着する、という方も見受けられますが、事前に慣らしておくと安心です。

よいイメージと関連付ける

鈴木 知之

はじめて身に着けたり、触れたりするものの場合、「なんだこれ!?」と不快感を抱く子が多いです。ネガティブな感情のまま無理に経験させてしまうと、それを見るだけで逃げ回るように……なんてことはよくあります。

こうならないために、犬がよいイメージをもっているものとセットで慣らしていく方法がおすすめです。
たとえば首輪の場合、大好きなおやつやごはんを食べているときに装着してみましょう。違和感がありつつも、そのまま食べ続けてくれることが多いです。これを継続していくと、よいイメージと関連付いて、次第に喜んで装着されるようになっていきますよ。

4.体験に慣れさせる

体験に慣れさせるとは、「クレートに入ること」や「車に乗ること」など、子犬が自ら進んでその行動をとるようにしていくための下地をつくっていくということです。
決して無理させる必要はありません。社会化期の子犬であれば、「それをするといいことがある」というポジティブな動機さえつくることができればOKです。

たとえば、「車に乗ること」であれば、エンジンのかかっていない車からスタートしましょう。抱っこで一緒に乗ってあげて、そこで大好きなおやつをもらう、という経験を重ねると、ポジティブな動機がつくられていきます。
慣れてきたらエンジンがかかった状態でも同様におこなっていきます。子犬の様子を見ながらゆっくりとレベルアップさせていきましょう。

充実した社会化期を過ごしてもらうポイント

女の子とハスキーの子犬

焦って無理強いをしない

たとえば、「なんとしてでも社会化期内に」と焦ったり、たくさんのことを詰め込み過ぎたりと、ハードなスケジュールで教え込もうとすれば、子犬は戸惑い、受け入れることができなくなってしまいます。それでは本末転倒ですよね。

子犬が新しい物事を受け入れて、次第に「慣れていく」ということが大切です。苦手になったり恐怖心を抱いたりしないよう気を付けましょう。

怒ったり、叩いたりしない

怒るのも叩くのもNGです。効果がないうえに、子犬に恐怖心を与えるだけになってしまいます。

落ち着いて受け入れることができていたら褒めてあげましょう。もし子犬がたじろいだり、興奮したりしているようであれば、刺激が強すぎると考え、対象から離れるなどのサポートをしてください。

遊びながら信頼関係を築く

積極的にスキンシップとコミュニケーションをとり、一緒に遊ぶ時間をつくっていきましょう。
「この人と一緒にいると楽しいな」という気持ちは、安心感につながり、信頼関係が深まっていきます。

社会化において飼い主さんとの信頼関係はとても重要です。子犬にとっては、はじめてのことばかりのため、「一緒に経験していく」というスタンスが大切です。

子犬の性格や体調に合わせる

社会化期内に教えたいこと、見せたいもの、学んでほしいことはたくさんありますが、それらを子犬がポジティブに受け入れられるかが重要です。

子犬の性格は一頭一頭違います。繊細で慎重な子もいれば、逆に鈍くて動じない子もいます。楽しみ方も順応するスピードもそれぞれです。

また、そのときの体調も大きく関係があります。子犬の体調が悪いときは無理せず、回復を待ちましょう。

社会化期は、愛犬の性格と体調を見極めながら接していくのが基本です。

ドッグトレーナーに聞いた! 子犬の社会化期に関するQ&A

雷や花火など、あまり日常的ではないような音はどうやって慣らしたらいい?
日常的ではない音に慣れさせるには、インターネット上にある動画や、市販されている社会化のためのCDを利用するのがおすすめです。音の出るタイミングや音量をコントロールできるので、とても便利です。

はじめのうちは様子を見るために、小さめの音量からスタートします。大丈夫そうであればおやつを与えるなどして褒め、少しずつボリュームを上げるようにしていきましょう。

苦手な音がある場合は、その音を鳴らす前からおやつを与えておくといいですよ。そうすることで、その音に意識が向かずに済みます。その状態で音慣れをスタートしていき、徐々におやつをあげるタイミングを音のあとにしていきます。

いずれにしても、様子を見ながら少しずつおこなっていきましょう。
傘が急に開いたことに驚いて以来、傘を怖がるようになった。どうしたら?
特定の対象物がトラウマになってしまっている場合、直接その対象物に慣らそうとするとなかなか苦戦することが多いです。このような場合は、何か別のものに意識を向けさせながらの、間接的なアプローチが効果的です。

今回の場合、傘が対象物なので、たとえば傘の周りで大好きな引っ張りっこ遊びをしてみましょう。傘から遠い位置で遊びはじめ、夢中になってきたら少しずつ傘に近づいていきます。傘の近くにおもちゃを投げて取りに行けたら大成功です。
※引っ張りっこではなく、おやつでも有効です

傘は、閉じた状態→開いた状態→人がゆっくり開閉している状態……というように、少しずつレベルを上げていくといいですよ。

まとめ

笑い顔のゴールデンレトリバー
「社会化期はいろいろやらないと……」と、思う方もいるかもしれませんが、社会化の基本は「焦らず少しずつ」です。
はじめてのことを経験していくので、思い通りにいかないこともたくさんあります。そんなとき、子犬だけに頑張らせるのではなく、必要なサポートをして一緒に乗り越えていけるようにしましょう。
ちょっとしたことでも、子犬にとっては大きな一歩です。ぜひ、そんな一歩を一緒に楽しんでくださいね。