要求吠え・要求鳴きとは

上を向いて鳴く子犬
要求吠えも要求鳴きも、どちらも自分の気持ちを伝えるための表現方法です。両者に明確な線引きはありませんが、要求吠えのほうが意図をもって、はっきりと主張している場合が多いです。

子犬期に多い要求鳴き

子犬はさまざまな経験が少なく、慣れないことも多いため、不安を感じたときによく要求鳴きをします

とくに子犬を迎えたばかりのころに一番多いのは、「ケージから出してほしい」という要求鳴きです。
クンクン悲しげに鳴いている様子を見るのはいたたまれないものですが、「鳴いたから外に出してくれた」と学習させないようにするために、鳴いている最中は応じないようにしなくてはなりません。

できるだけそのような状況をつくらないためには、ケージに入れる前にたっぷり遊んで疲れさせて、寂しいよりも眠気のほうが勝るようにしたり、はじめのうちはケージの横で寝てあげたりするとよいでしょう。
子犬が鳴いてから横で寝るのは逆効果になるので注意が必要です。

また、ケージをタオルや毛布で覆ってあげるという方法で落ち着く子もいます。

大人になったらなおるわけではない

子犬のころの要求鳴きですが、「鳴けば要求が通る」と学習してしまうと、大人になっても繰り返すことが多いです。

また、要求鳴きから要求吠えに発展するケースもよく見られます。「鳴いても(吠えても)要求は通らない」と、一貫した態度を示すことが大切です。

要求吠え・要求鳴きの主な理由

「ごはんまだ? 早く食べたい!」という催促、「散歩に行きたい!」「遊んでほしい!」「ここから出して!」など、愛犬が要求吠え・要求鳴きする理由はさまざまです。

ほかにも、「抱っこしてほしい」や、家族の食事中の「構ってほしい」「ちょうだい」など、欲求はたくさんあるため、そのたびに吠えたり鳴かれたりするのは、飼い主さんの頭を悩ませるものです。

また、犬は嬉しくても興奮して吠えます。要求が通ったことを喜んで吠え、さらにおねだりのために吠えるという、悪循環にはまってしまうパターンもあります。

要求吠え・要求鳴きにこんな対応はNG

ズボンのすそを噛む子犬

大きな声で叱る

愛犬の吠え声に負けないような大声で叱ることは、避けるべきです。

瞬間的に静かになることもありますが、犬が声の大きさに驚いてしまい、怒られた意味を理解しづらくなったり、ただ怯えて縮こまってしまったりすることがあります。また、飼い主さんが何か反応してくれたものと勘違いし、さらに大きな声を出す……ということにもなりかねません。

おやつで黙らせる

この方法は手っ取り早く、犬がおやつを食べる間は静かになるため、ついつい使ってしまう飼い主さんも多いものです。しかし賢い犬は、「吠えればおやつがもらえる」ということをすぐに学習します。
悪循環に陥る方法なので気を付けましょう。

「仕方がないなぁ」と要求をのむ

忙しいとき、疲れているときは、「早く静かになってほしい」との気持ちから、つい「面倒だから要求をのんでしまおう」と考えるかもしれません。

しかし、「要求吠え」の習慣を断つには、一貫した態度が重要です。要求吠えをやめるまで根気よく待ち、吠えるのをやめたら褒めて応じてあげる……。これを徹底しましょう。

要求吠え・要求鳴きの対処法

叱られている子犬
吠えているときの対処法だけに目がいきがちですが、そもそも吠える要因を解消しておくという考え方をもっておくことも重要です。
すでに吠えてしまっているときと、吠える前(予防策)の2つにわけて、対処法を整理しておきましょう。

すでに吠えてしまっているとき

無視をする

「無視する」と聞くと、かわいそうに感じる飼い主さんも多いかもしれませんが、もうすでに吠えてしまっている場合は無視をすることが一番効果的です

愛犬の要求吠えには反応しないように努めましょう。
目が合うことも愛犬からすると「飼い主さんが反応してくれた」と認識するため、愛犬の様子を気にしつつ、目線を合わさないように気を付けます。

静かになったらすぐに褒める

吠えたことに対して無視をしながら、常に愛犬の様子は気にかけておき、静かになったタイミングですぐに褒めてあげるようにしましょう。

そうすることで「自分の要求を通すために、一生懸命吠える必要はないんだ」ということを覚えていきます。

吠えている理由を見極めよう

鈴木 知之

犬が吠える理由は要求吠えだけではありません。以下のような6つにわけることができます。

1.要求があるから吠える「要求吠え」
2.警戒、恐怖、威嚇で吠える「警戒吠え」
3.テンションが上がって吠える「興奮吠え」
4.寂しさなどの不安から吠える「不安吠え」
5.犬としての本能から吠える「遠吠え」
6.苦しい、痛いなどを訴えて吠える「体調不良吠え」

吠えている理由によって対策や対応方法は変わります。吠えているからといって「要求吠えだ」と簡単に決めつけないようにしましょう。
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吠える前におこなう予防策

たっぷり遊ぶ

運動欲求が十分に満たされないと、飼い主さんに対して吠えやすくなります。吠える前に、おもちゃ遊びや散歩でたっぷりと運動欲求を満たしてあげましょう。

「吠える前」がポイントです。「吠えた後に遊ぶ」と、吠えることで要求が通ったと思わせてしまうので注意しましょう。

知育おもちゃを活用する

退屈になることも飼い主さんへ吠える要因の一つです。
退屈しのぎになるような、長い時間遊べる丈夫なおもちゃを使いましょう。中にごはんやおやつを詰めておくことができる知育おもちゃがおすすめです。

長時間構ってあげられないようなときは、前もっておもちゃを与えておくとよいでしょう。

パターンを変える

犬は飼い主さんが教えなくても、自分にとってよいことが起きるお決まりのパターン(ルーティン)を自然と学習します。このルーティンが原因で、要求吠えに発展してしまうことがあります。

よくあるのが、ごはん前や散歩前に吠えるケースです。
いつも決まった時間・方法で行動していると、犬はそのルーティンを自然と学習し、「そろそろでしょ?!早く!」と吠えて訴えるようになります。

時間帯をランダムにしたり、準備したあとに時間を空けたりして、ルーティンを定着させないことも予防策の一つです。

要求吠えを防止するしつけ 3つのコツ

おねだりする犬

1.ルールを教える

犬たちは「どうすれば自分の要求が通るか」をはじめから理解をしていません。だからこそ、要求の通し方を飼い主さんがきちんと教える必要があります。
普段の生活のなかで、ルールを教えることで要求の通し方を学ばせるようにしましょう。

たとえば、一緒に遊ぶときに、座って待つことが遊びはじめのルールだと愛犬に教えます。
お互いにとって共通ルールにできれば、愛犬は一生懸命に吠えて要求することもなくなっていきます。

2.正しいことをしたら褒める

ルールを教えるためには、何が正しいことなのかを丁寧に教えることが不可欠です。ワンワンと吠えてくることを、ただ「うるさい!」と叱ったところで、愛犬は何が正しいのか、何が間違っているのかわかりません。

「〇〇してほしいときは、こうすればいいんだ!」と愛犬自身が理解するためには、望ましい行動をしたときに、飼い主さんがしっかり褒める必要があります。
褒めたあとに、遊ぶ、散歩に出かける、ごはんをあげるというような、愛犬にとってご褒美となることをおこなっていくと、納得して望ましい行動をとるようになっていきます。

3.一貫した対応をする

ルールを教える際は、一貫性が重要です。
あまりにも一貫性がないと、何が正しいのかを愛犬がなかなか理解することができません。その日の気分や、家族間で対応の差がないようにしましょう。

ドッグトレーナーに聞いた! 犬の要求吠えに関するQ&A

要求吠えをしている愛犬に対して、撫でて落ち着かせてもよい?
「もう少し待ってね」などと優しく声をかけたり、撫でて気をそらせたりするのは、一見正しい対応に思えますが、「吠えたら構ってもらえた」と欲求を満たしてあげたことになってしまいます。
それを繰り返していくと、「吠えること=要求を通すための有効な手段だ」ということをどんどん学んでいくため注意が必要です。

吠えている最中は無視したり、静かになってから褒めたりするとよいでしょう。
ケージに入れた直後に吠える場合、どうしたらいい?
主に二つの理由が考えられます。

①欲求が満たされていない
愛犬が「もっと遊びたい」「もっと構ってほしい」と思っている可能性があります。そういったタイミングでケージに入れると、欲求が満たされないことでの要求吠えが出やすい状況になります。

あらかじめケージに入れる前にたっぷり遊んだり、散歩をしたりして欲求を満たしておくとよいでしょう。また、フードやおやつを知育おもちゃにセットして、ケージに入れるタイミングで与えるのも効果的です。

②ケージに慣れていない、嫌な印象を持っている
ケージによい印象をもっていない可能性があります。愛犬の気持ちに反して、飼い主さん都合でケージに入れることを続けていると、ワンちゃんにとって「ケージ=閉じ込められる場所」と認識するようになってしまいます。

ケージの中でごはんをあげたり、入ったらおやつをあげて褒めたりするなど、愛犬にとってプラスの出来事と関連付けて、ケージによい印象をもってもらえるようにしましょう。
また、ケージを大きめの布で覆って目隠ししてあげると落ち着く子もいます。ケージに慣れていないような子は試してみるのもおすすめです。


犬側の都合も考えて対応していき、ケージを「安心して休める場所」にしていきましょう。

まとめ

散歩するコーギー
要求吠えを防止するために重要なのは、要求のもととなる不満を日ごろから解消することと、正しい要求の仕方を教えることです。
できるだけシンプルでわかりやすいルールを作り、吠えて要求することのないように導くことが大切です。
愛犬との信頼関係を築きながら、お互いが快適に過ごせるようにしましょう。