犬にシャンプーは必要! 

シャンプーをする犬
愛犬の定期的なシャンプーは、お手入れの一つとして欠かせません。
シャンプーをしないと、汚れや臭いが気になるだけでなく、毛玉や皮膚病の原因になることがあります。
衛生面と健康面を管理するためにも、犬のシャンプーは必要なのです。

子犬のシャンプーはいつから?

子犬のシャンプーは、最終ワクチンから10~14日(最短で7日)以降におこなうのがおすすめです。

これは免疫力の観点や体力の消耗を考慮したタイミングですが、「足だけ、おしりだけ」などの部分洗いに関しては、ワクチン前でも可能です。汚れが気になるときは部分洗いで対処してあげましょう。

ただし、迎えて間もない子犬は、まだ新しい環境に慣れていないことがあります。
また、日々の生活の中で、初めて経験することが多く、気持ちが敏感になっていることも考えられます。
シャンプーの開始時期は、子犬の様子を見ながらおこなってください。

犬のシャンプーの頻度

犬種や体質にもよりますが、皮膚にトラブルがない健康な犬の場合は1~2ヵ月に1回、最低3週間の間隔を空けるのがおすすめです。
シャンプーのし過ぎは、肌に必要な皮脂まで奪ってしまいますし、しなさ過ぎても肌のべたつきやフケ、かゆみなどの肌トラブルに発展することがあります。

犬のシャンプーの手順 

シャンプーをする子犬
ここでは、シャンプーの進め方を紹介します。
シャンプー前に肛門絞りをすると、すぐに洗い流せるのでおすすめです。肛門絞りが難しい場合は無理におこなわず、動物病院やトリミングサロンにお願いしましょう。

準備する物

  • 犬用シャンプー
  • 犬用リンス(必要であれば)
  • ブラシ
  • ドライヤー
  • タオル
  • 保湿剤(必要であれば)
  • 洗面器(必要であれば)
  • ペット用のバスタブ(必要であれば)
  • 泡立てネット(必要であれば)

ステップ1.ブラッシングをしてしっかり濡らす

まずはブラッシングで毛の絡まりやほこり、抜け毛を落とし、地肌までしっかり濡らします。そうすることで、地肌までシャンプーが届きやすく、泡立ちもよくなります。

お湯は37~38℃くらい、少しぬるいと感じる温度が理想。熱すぎたり冷たすぎたりしないか、必ず自分の手で確認しましょう。

頭からいきなりお湯をかけると、犬がびっくりしてしまいます。後ろ足やおしりからお湯をかけて、少しずつ慣れさせます。
また、シャワー音を怖がる犬もいるので、シャワーヘッドを体に押し付けるようにしてお湯をかけるのがおすすめ。シャワーの音がしなくなり、犬が嫌がりにくくなります。

桶を使った方法もおすすめ

高野 航平

シャワーを怖がる子には、桶にお湯を張り、慣れるまでそこに入ってもらいながら洗う方法もおすすめです。

ステップ2.シャンプーをする

シャンプーはあらかじめ洗面器などに泡立てておいたり、水で薄めておいたりすると馴染みやすくなります。泡立てネットやスポンジを利用してもいいでしょう。

シャンプーを馴染ませたら、おしり→体→頭の順番で洗い、上から下へ向かって洗いましょう。汚れがたまりやすい肉球もしっかり洗います。
爪を立ててゴシゴシこするのではなく、指の腹を使って、優しくマッサージするような感覚でおこないます。

顔周りはなでるように洗い、目や耳にシャンプーが入らないように気を付けてください。犬が嫌がる場合は、無理に洗わなくても大丈夫です。

ステップ3.すすぐ

すすぎは、シャンプーとは逆に、頭→体→おしりの順番で、上から下へ向かって流します。
シャワーをかけるだけではなく、指の腹を使いながら、すすぎ残しのないように洗い流します。
すすぎ残しがあると、かゆみやフケ、炎症といった皮膚トラブルの原因になります。すすぎ忘れが多い四肢やおなか、首周りなども、しっかりすすいであげましょう。

静電気や被毛の絡まりを防ぐことができるので、必要に応じてリンスをするのもおすすめです。
お湯で薄めたリンスを首から下の全身にかけて、手でしっかりなじませます。シャンプー同様、ぬめりが残らないように、しっかり洗い流してください。
シャンプー1本でトリートメント効果が得られるリンスインシャンプーも便利です。

ステップ4.乾かす

生乾きは皮膚炎やにおいの原因となるので、しっかりと乾かしましょう。

タオルでびしょびしょの体を拭く前に、まずは犬にブルブルッと身震いをさせて水分を飛ばすようにすると、その後タオルで拭く行程が楽になります。
身震いをしてくれない場合には、耳に息を吹きかけてみましょう。
くすぐったくて頭や体を振るので、そのときに「ブルブル」などの声掛けとともにたくさん褒めてあげると、今後は声掛けで身震いをしてくれるようになります。

ある程度水分を飛ばしたら、ドライヤーを使って地肌まで乾かしましょう。
根元までしっかり乾かすために、ブラシで毛をかき分けながらおこないます。
同じ箇所にドライヤーを当て続けると、やけどをする可能性があります。温風と冷風を使い分け、ドライヤーを犬の体に近づけ過ぎることのないように気を付けてください。

シャンプー後に、濡れた毛を手で絞ってから、しっかりタオルドライをすると、乾かす時間を短縮できます。
愛犬の皮膚の乾燥が気になる場合は、最後に保湿剤をぬってあげてもいいでしょう。

シャンプー後はしっかり休息を

高野 航平

人が想像する以上にワンちゃんはシャンプーによって体力を消耗しています。シャンプー後はゆっくり休ませてあげるようにしましょう。

犬のシャンプーの選び方 

シャンプーをする犬
犬の皮膚は人間よりもデリケートで、皮膚のpHも異なります。pHとは肌の酸とアルカリの度合いを表す数値のことで、人間は弱酸性であるのに対し、犬は中性~弱アルカリ性です。
人間用のシャンプーを使用すると被毛や皮膚のトラブルにつながることもあるので、必ず犬用のシャンプーを使いましょう。

シャンプーの選び方1.被毛の種類

まずは、長毛種、短毛種といった被毛の種類や、毛色に合わせてシャンプーを選ぶ方法を紹介します。

長毛種

トイプードル、ボーダーコリー、ゴールデンレトリバーなどの長毛種には、トリートメント効果の高いシャンプーがおすすめ。
ふんわり柔らかく仕上がり、被毛のダメージケアができるので、毛の絡まりを防ぐことができます。

短毛種

柴犬、フレンチブルドッグ、ラブラドールレトリバーなどの短毛種には、ハリやコシの出るタイプがおすすめです。
ただし、なかには皮膚トラブルを起こしやすい犬もいます。低刺激性のシャンプーを選びましょう。

毛色別

マルチーズやビションフリーゼなど、白い毛色で、汚れが目立ちやすい犬には、ホワイトニングシャンプーがおすすめ。
毛色別のカラーシャンプーもありますので、ブラックやアプリコットの毛色であれば、それに合わせたシャンプーを選びましょう。
これらのシャンプーには本来の毛色を維持したりよみがえらせたりする効果がありますが、刺激の強いものもあるので、皮膚の弱い犬に使用する場合は注意が必要です。

シャンプーの選び方2.汚れ具合

汚れがひどい場合や脂性肌の犬には、クレンジングシャンプーや、さっぱりとした洗い上がりの薬用タイプがいいでしょう。
または予洗いとしてクレンジングシャンプーを使い、汚れや皮脂を浮き上がらせてから、通常のシャンプーを使ってもOK。
薬用タイプのシャンプーには皮膚に対する刺激性が強いものもあります。獣医師に相談してから使用してください。

シャンプーの選び方3.子犬・敏感肌

皮膚や被毛がまだ成長過程の子犬、肌が弱い犬には、子犬用や無添加で刺激が少ないシャンプーが安心。
汚れはしっかり落としつつ、皮膚のバリア機能を崩さないマイルドな洗い上がりが特長です。

シャンプーの選び方4.香りがよい

香りの持続性でシャンプーを選ぶ方法もあります。ただし、犬の嗅覚は人間よりもかなり優れているため、香りがストレスになることも。
シャンプーの香りは、飼い主のためにあるものです。愛犬が嫌がっていないかを観察しながら、慎重に選んでくださいね。

獣医師が教えるシャンプーの選び方

界面活性剤の種類で選ぶ方法も

シャンプーの洗浄力は含まれている界面活性剤の種類によって左右されます。
界面活性剤の種類として、高級アルコール(炭素を6個以上持ったアルコール)や石鹸系は洗浄力が強く、ベタつきがある子には適していますが、皮膚が弱い子には不向きです。
一方、アミノ酸系は保湿力があり、皮膚に優しいので皮膚に弱い子には適しているものの、洗浄力は比較的弱い傾向にあります。

それぞれメリット・デメリットがあるので、界面活性剤の種類を見て選ぶのもひとつの方法です。

病的な症状がなければオーツシャンプーがおすすめ

動物病院では皮膚トラブルがある場合はそれに合わせたシャンプーを、病的な症状がない場合は、保湿と自然派に重きを置いたオーツシャンプーをおすすめしています。
週2~3回使っても大丈夫なシャンプーなので、シャンプーによる皮膚トラブルを心配されている方におすすめです。
オーツシャンプー エクストラ(ZENOAQ)

人間用のシャンプーはNG

高野 航平

ワンちゃんにおいては、保湿と外部刺激から皮膚を守ってくれるバリア機能を持つ表皮の厚さが人の1/3程度しかないため、些細な刺激が炎症などの皮膚トラブルを引き起こしてしまうことがよくあります。
また、人の皮膚表面のpHが弱酸性であるのに対し、ワンちゃんでは中性~弱アルカリ性であるため、人のpHに合わせたシャンプーを使用すると皮膚にダメージを与える可能性も。ワンちゃんには必ずワンちゃん用のシャンプーを選びましょう。

愛犬をシャンプー好きにするコツ 

お風呂を嫌がる犬
衛生面に加え、健康管理のうえでも大切な犬のシャンプーですが、はじめは嫌がる犬が多いものです。
重要なのは、犬がシャンプーを楽しい時間だと認識すること。ここでは、犬がシャンプーを嫌がらずにさせてくれる方法を紹介します。

おやつを与えながら練習

食事量に影響がない量のおやつを小分けで与えながら、シャンプーの練習をします。犬が喜ぶこととセットでおこない、シャンプーをポジティブなイメージにするのが目的です。

もし、おやつを食べない場合は、かなり恐怖心が強いことが考えられます。いったん練習はストップして、別の日に再度チャレンジしてみてください。

褒めながらタッチ

体を触られること自体が苦手な犬の場合、まずは触られることに慣れさせる必要があります。まずは体の側面や、耳の後ろなどを優しくなで、徐々に触れる部位を増やしていきます。

ポイントは、各部位を触るごとに褒めること。飼い主に触られることが、楽しいスキンシップの時間であると感じてもらいましょう。触るごとにご褒美としておやつをあげると、より効果的です。

お風呂場に慣れさせる

シャワーの音に恐怖心を感じていたり、濡れることが嫌だったりすることがあります。その場合は、まずはお風呂場に入ることだけを目的にします。

まずは、お風呂場でおやつを与えてみましょう。犬がおやつを食べることができたら、シャワーの音を聞かせつつ、おやつを与えてみます。
その次に、遊びながら足先だけつかるお湯浴びをします。おやつや遊びを取り入れて、お風呂場=楽しい場所であると覚えさせましょう。

ドライシャンプーや温タオルも活用

高野 航平

水音も体がびしょびしょに濡れることもお風呂場に行くことも怖いという子の場合は、ドライシャンプーを使ったり、温タオルなどで優しく身体を拭いたりするところからはじめましょう。
嫌がる場合は無理に進めず、おとなしくしていたらおやつをあげて思いっきり褒めてあげてください。

犬のシャンプーの注意点 

シャワーを浴びる犬
最後に、犬にシャンプーをする際の注意点を解説します。

犬のシャンプーは大切なお世話の一つですが、間違った方法でおこなうと愛犬がシャンプー嫌いになったり、健康を損ねてしまったりすることがありますので気を付けましょう。普段から体に触られることに慣れさせておくこと、マッサージされることは気持ちがよいことを覚えてもらい、飼い主に触られる、マッサージされることの延長として、シャンプーがあると理想的です。

ゴシゴシこすらず、優しく洗う

人間の皮膚の1/3以下の厚さしかないといわれいる犬の皮膚は、とてもデリケート。シャンプーの成分も大切ですが、摩擦にも注意が必要です。

ゴシゴシこすったり、爪を立てたりして洗うのはNG。人が髪を洗う力加減でも強すぎます。
指の腹を使って、優しくマッサージするように洗ってください。

湯温は37~38℃くらいのぬるま湯がベター

人間にとって心地よく感じる40℃前後のお湯は、犬にとっては熱すぎます。ちょうどいい温度は、37~38℃くらいのぬるま湯。
犬にお湯をかけるときは、必ず手で湯音を確認しましょう。

湯船やペット用のバスタブに入れる場合は、5分程度で十分。
のぼせたり、体調を崩してしまったりする心配があるので、決して長風呂にならないように注意しましょう。

シャンプーは手早く

犬にとって、長時間の拘束は、心身の負担につながります。とくに水や音への恐怖心がある犬は、強いストレスを感じてしまいます。
犬の負担をできるだけ軽くするために、「素早く」「丁寧に」を心がけ、短時間で済ませましょう。

夏場は熱中症、冬場は寒さに注意

犬のシャンプーをするときには、お風呂場の温度にも配慮しましょう。

夏場は、湯気やドライヤーの温風で、湿度・温度ともに上昇するため、熱中症になりやすい環境です。
シャンプー中は換気扇を忘れず、ドライヤーは冷房の効いた部屋でおこなうのがおすすめです。

冬場は、浴室と脱衣所の温度差に注意します。暖房を用意し、脱衣所を温めておくといいでしょう。

暴れるときは無理をしない

犬がシャンプーを嫌がって暴れるような場合は、プロにお任せしたほうがいいでしょう。
無理にシャンプーをすると、犬のストレスが助長されるだけではなく、飼い主との信頼関係が崩れてしまうこともあります。

どうしても暴れる犬を自宅でシャンプーをしたい場合は、口輪をつける、二人でおこなうといった対策を取り入れてみてください。
ただし、一番大切なのは、犬の気持ちに寄り添うこと。
濡れタオルで拭くなどのケアで代用しながら、徐々に警戒心や恐怖心を取り除いてあげるほうが、犬とよい関係性を築けるでしょう。

このような場合は獣医師に事前確認を

高野 航平

フィラリア・ノミ・マダニなどの寄生虫予防薬としてスポット剤を使用している、ワクチン接種後、心臓病などの基礎疾患があるなどの場合は、シャンプー可能な時期・温度・入浴時間などについて、事前に必ず獣医師に確認を取るようにしてください。

獣医師に聞いた! 犬のシャンプーについてのQ&A

顔がうまく洗えない。なにかいい方法はある?
顔の正面からシャワーを向けると怖がってしまうことがありますので、後頭部からシャワーヘッドを押し付けた状態で優しく流してあげてください。それでも嫌がる場合は、濡れタオルや水を含ませたスポンジなどで軽く拭いてあげるだけでも構いません。
無理に洗うと目や耳にシャンプーが入ってしまったり、トラウマになってしまったりすることもあるため、ワンちゃんの様子を見ながら負担にならないように洗ってあげてください。
シャンプーをしても犬が臭う。どうして?
洗浄力が弱く、汚れが落ち切っていない、泡立ち不足などで地肌までシャンプーが届いていない、シャンプーの間隔が長く、汚れが蓄積してしまっているといったことが主な原因として考えられます。
これらを見直しても体臭がなくならない場合は、細菌や真菌感染による皮膚炎、脂漏症等の病的な要因が隠れていることがあります。その際は診察を受けるようにしてください。
ドライヤーって必ずしないといけないの? 自然乾燥じゃダメ?
自然乾燥は時間がかかり、濡れて体が冷えている時間が長いことでお腹を壊す、風邪を引くなどの体調不良になることがあります。
また、被毛の表面は乾いていても皮膚表面や足裏など、乾きづらい部分には水分が残っていることがあり、そのままにしてしまうと雑菌が繁殖し、皮膚トラブルに繋がることも。
そうならないためにも、タオルドライをしっかりしたあとにドライヤーをかけていただくことをおすすめします。

獣医師からのメッセージ

ワンちゃんのシャンプーのポイントは下記の4つです。
  • 体質に合ったシャンプーを選ぶ
  • シャンプーの効果が最大限引き出される方法で洗ってあげる(全身をまんべんなく濡らす、しっかり泡立ててから使用するなど)
  • シャンプー後はしっかり全身を乾かす(脇の下や足指の間などは特に乾きづらいため、生乾きにならないように注意が必要)
  • シャンプー後は1日ゆっくり休ませてあげる

また、ワンちゃんが楽しい気持ちでシャンプーできることがとても大切です。
おやつなどでボディータッチやお風呂場に慣れる練習をしてもらい、スムーズにおこなえるようにしましょう。

まとめ

シャンプーをする犬
今回紹介したシャンプーの手順や注意点を参考に、自宅でのシャンプーに挑戦してみてくださいね。
はじめてのシャンプーはスムーズにいかない点もありますが、シャンプーに対する嫌なイメージを犬に植え付けないように、少しずつ段階を踏みながら進めていきましょう。