犬のサマーカットとは

サマーカットをするトイプードル
サマーカットとは、夏が近づくことで暑くなるため、涼しさを求めて本来の長さよりも被毛を短くすることを指します。

犬の被毛にはあらゆる刺激から皮膚を守ったり、体温調節をしたりする役割があります。そのため、被毛が短くなることで見た目はすっきりしますが、切りすぎるとさまざまなトラブルを引き起こす可能性もあるのでカットする際は注意が必要です。

サマーカットをおこなう際は、愛犬の被毛などに関する正しい知識をもってカットすることが大切です。

カットが向いている犬種

犬は、グルーミング犬種トリミング犬種の2つに分けられます。

グルーミング犬種とは、基本的にダブルコート(上毛と下毛の2種類で構成される被毛)の犬を指し、約半年に1回の「換毛期」に下毛が生え変わります。被毛は一定の長さまでしか伸びません。

一方、トリミング犬種とは、基本的にシングルコートの犬を指し、毛が自然に抜け落ちることが少なく、伸び続けることが特徴です。なかには、ダブルコートでも定期的にトリミングをおこなう犬種も存在します。
被毛の特徴から、どちらかというとトリミング犬種のほうがサマーカットに向いているとされています。

サマーカットに向いている主な犬種は次のとおりです。
  • プードル
  • マルチーズ
  • ヨークシャーテリア
  • シーズー
  • ミニチュアシュナウザー
  • アメリカンコッカースパニエル
など

サマーカットに向いているとはいえ、短すぎたり、頻繁に切ったりするのは避けましょう。カットすべきかどうか、長さはどうするかなど、サロンで相談しながらおこなうのが安心です。

犬のサマーカットのメリット

サマーカットしたヨーキー

通気性がよくなる

毛が短くなった分、地肌まで風が届くようになります。全体的に通気性がよくなることで、熱がこもらず蒸れにくくなるため、皮膚トラブルの防止につながります。

お手入れがラクになる

サマーカットをすることで、ブラッシングやシャンプーの負担が軽減されます。被毛が短いのでシャンプー後も乾かしやすく、毛玉やもつれができにくいことも特徴の一つです。

皮膚疾患の早期発見

地肌が見えやすくなり、発疹などの皮膚疾患の早期発見につながります。早期発見によって、悪化する前に治療をおこなうことができます。

犬のサマーカットのデメリット

不安そうな犬

直射日光によるダメージが大きい

日光が皮膚に直接当たりやすくなり、皮膚の温度が上がることで熱中症の危険性が高まります。カット後の被毛の長さによっては、日焼けによって炎症が起きるケースもあります。

また、皮膚に直接紫外線を浴びることで、皮膚がんの原因となるおそれもありますので、十分に注意が必要です。

被毛に悪影響が出る

毛周期に影響が出て、毛刈り後脱毛(バリカン脱毛)によって毛が伸びてこないといったことも起こる可能性があります。
毛が生えてきたとしても、生えそろうのに時間がかかったり、やわらかい毛質から硬めの毛質に変化したりするケースもあるので要注意です。

虫に刺されやすい

皮膚を守る被毛が短くなることで、蚊・ノミ・ダニなどに刺されるリスクが高くなるのもデメリットの一つです。虫刺されによるかゆみのほかに、感染症を引き起こすことも考えられます。

また、愛犬自身が後ろ足で掻くことによって爪痕が残ってしまうこともあるので、虫刺されやかゆみ対策が必要です。

体が冷えすぎてしまう

被毛は、保温機能の役割も担っています。サマーカットで毛を短くすると、エアコンの効いた部屋や涼しい場所で寒がることも……。

体温調節ができずに、おなかを壊すなどの体調不良を起こす原因にもなるので、十分に注意しましょう。

サマーカットを失敗させないための注意点

サマーカットで使うハサミやバリカン

長さ・スタイルを事前に決める

サマーカットをする際に「被毛の長さは何ミリにするとよい」といった明確な数値はありませんが、地肌が見えるほど短く切りすぎないように注意しましょう。

【バリカンの長さのイメージ】
  • 2~3mm:素肌感が強く、つるつるとした印象
  • 5mm前後:短めのさっぱりとした印象
  • 8mm前後:地肌が見えない長さ
  • 10~13mm:短くはなっているものの、ふんわり感が残る印象

サマーカットで失敗しないためには、トリミングサロンで事前に相談して長さやカットスタイルを決めることをおすすめします。

また、「テディベアカット」「柴犬カット」など、さまざまなカットスタイルがある犬種の場合も、イメージ通りになるようにトリマーとよく相談してからカットしましょう。
画像や写真を用意してイメージを一致させておくと、失敗せずにカットできるはずです。

セルフカットはできる範囲でおこなう

セルフカットは無理のない範囲でおこなうようにしましょう。ハサミやバリカンを使いこなすには、ある程度の技術が必要です。

飼い主さんがカットする場合は、愛犬がケガをしないように十分配慮してください。

部分カットのみおこなうのもおすすめ

セルフカットは、おなか周り、脇の下、耳の内側、足の裏、おしり周りなどの部分カットだけおこなうのもおすすめです。部分カットだけでも、暑さ対策、毛玉やケガの防止、衛生面の確保などの効果があります。

どうしてもセルフカットが難しい場合は、自宅でカットするのをあきらめて、プロに任せることも考慮しましょう。

サマーカット以外の犬の暑さ対策

ブラッシング中の犬

こまめなブラッシング

日ごろからこまめにブラッシングして、アンダーコートを取り除くことで、通気性がよくなります。
体全体の熱を逃がすのに有効ですので、スキンシップも兼ねてしっかりとブラッシングしてあげましょう。

室温・湿度の管理を徹底する

エアコンを使って、過ごしやすい室温・湿度の維持を心がけましょう。扇風機やサーキュレーターを活用して、部屋全体の空気を循環させるのも効果的です。

愛犬を留守番させる場合にも、快適に過ごせるよう工夫する必要があります。

暑い時間帯の散歩は避ける

とくに暑い時期の散歩は、比較的気温が低い時間帯を選びましょう。
犬は人間よりも地面に近いため、体感温度が高くなります。散歩中も水分補給できるよう準備し、熱中症対策をおこなってください。

肥満にさせない

肥満体質な犬は、体全体の熱が上がりやすくなってしまいます。皮下脂肪によって、体内にこもった熱を逃がしにくいのが原因です。

犬の熱中症は、被毛の長さよりも、不十分な体重管理が原因となることが多いといわれています。とくに首回りに脂肪がついてしまうと、うまく体温調節できないおそれがあります。
日ごろから体重管理を徹底しましょう。

暑さ対策グッズを使う

ペットショップやインターネットでは、愛犬などが快適に過ごせる暑さ対策グッズが多数販売されています。
冷感マットやウエア、クールミストなど幅広いアイテムが存在するので、その状況にふさわしい暑さ対策グッズを活用して、愛犬の体温管理をおこないましょう。

また、サマーカットをして散歩させる場合にも、ウエアなどを活用して、皮膚に直接紫外線が当たらないようにするなどの工夫も必要です。

まとめ

サマーカットをするシーズー
犬にサマーカットすることで、通気性がよくなる、毎日のお手入れが簡単になるなどのメリットがあります。しかし、犬種によって向き・不向きがありますので、愛犬の被毛タイプに合わせたカットが必要です。
また、短くしすぎると被毛本来の役割を果たせず、熱中症や皮膚トラブルなどを引き起こすケースもあります。正しい知識を得たうえでカットしたり、サマーカット以外の暑さ対策をおこなったりして、快適に過ごしましょう。