犬の歯磨きは必要? しないとどうなるの?

犬 フード
人間と同じように、犬にも歯磨きが必要です。犬は歯垢が歯石になるスピードが速く、放置すると歯石がたまってしまいます。歯垢と歯石が蓄積していくと、歯茎に炎症が起きて歯周病になってしまいます。WSAVA(Global Dental Guidelines)のデータでは、2歳の犬の約80%に、口腔に何らかの健康課題があるとされています。

犬の口臭はお口の健康のバロメーターです。犬の口臭が強いと感じられる場合、歯周病になっている可能性があります。

歯周病が進行すると、歯茎が腫れてとても痛い思いをさせてしまいます。最終的には歯が抜け落ちてしまうことも。
さらに歯周病は口内の問題にとどまらず、心臓や肝臓、腎臓などの全身的な健康にも関係しているといわれています。
また、歯周病は口内に痛みを生じるため、犬にとってストレスになります。性格の変化や食欲減退、活動性の低下につながることもあります。

歯周病にならないためには、飼い主がしっかりお口の健康を維持してあげることが大切です。
そのためには、毎日の歯磨きが習慣化できるように、飼い主が積極的に関わる必要があるのです。

犬の歯磨きはいつから? 頻度は?

子犬 歯磨き

はじめる時期

犬の歯磨きをスタートさせるのは、乳歯が生えたタイミングがベスト。乳歯は4~6カ月齢になると抜けはじめるため、永久歯が生えるまでは歯磨きの必要がないようにも感じます。

しかし、永久歯が生えはじめた段階でいきなり歯磨きをしようとしても、スムーズにはいきません。子犬を家に迎え、環境に慣れてきたタイミングで、徐々に顔や口まわりに触れる機会を作るとよいでしょう。

頻度

歯磨きの頻度は、1日1回が理想的です。人間の歯垢が歯石化するまでには1ヶ月程かかりますが、犬の場合は3~5日程度で歯垢が歯石に変わるといわれています。このため、歯垢が歯石になる前に、最低でも3日に1回は歯磨きをしましょう。

子犬の場合も、老犬の場合も、歯磨きの頻度は毎日が理想ですが、無理のない範囲で習慣化を目指しましょう。愛犬とのコミュニケーションの一環として飼い主がしっかり歯磨きをしてあげてくださいね。

歯磨きの慣らし方

歯みがきする犬

STEP1 口のまわりを触る練習をしよう

はじめは、口元に触る練習から。口元に触れたら、おやつなどのごほうびをあげ、焦らず少しずつ口元に触る時間を長くしていきます。

なかなか口元を触らせてくれない子には、片手でおやつをあげながら、もう一方の手で口元を撫でることからはじめてもいいでしょう。口元を触られると、よいことがあると覚えてもらいます。

ライオンペット株式会社 遠山先生

遠山洋美 先生

口の中を触る練習の時に、指に犬の好きな味がするものをつけることもおすすめです。歯磨き用のジェルやペーストは、犬の好きな味にしている商品が多いです。ジェルやペーストのおいしい味を覚えてくれると、ごほうびの代わりに使うことも出来ますし、歯ブラシを使うときにも受け入れやすくなります。

STEP2 歯磨き用シートを巻いた指でなでてみよう

飼い主さんの手で口元に触らせてくれるようになったら、次は歯磨き用のシートやガーゼを巻いた指で口元に触ります。次に口唇をめくり、歯にタッチ。タッチになれたら、1本ずつやさしく磨いてみましょう
口を閉じたままでも構いません。おやつをあげながら、徐々に口の中に指を入れていき、奥の歯へと移動していきます。

まずはシートやガーゼで歯垢がふき取れるようになることが第一目標です。

STEP3 歯ブラシを口に入れて軽く歯をこすってみよう

濡らした歯ブラシに歯磨き用のジェルをつけ、愛犬に見せます。歯ブラシを舐めさせるなどしながら、ゆっくりと口の中に入れます。

なれてきたら、歯ブラシで歯にタッチします。タッチができるようになったら、歯ブラシをやさしく揺らしながら、1本ずつ磨いていきます。

歯ブラシを怖がるようなら、まずは歯ブラシを見せながらおやつをあげる→歯ブラシを見せ、口元を触りながらおやつをあげる、という手順を踏んで、歯ブラシにいいイメージをもってもらいましょう。

せっかく歯を磨いているのにおやつをあげたら意味がない! と思われるかもしれませんが、最初のうちはそれでもかまいません。歯磨きに慣れてもらうことを優先させましょう。

犬が歯磨きを嫌がる場合は?

隠れる犬
最初から、歯磨きを受け入れてくれる犬はなかなかいないものです。そのため、歯磨きタイムが犬にとって楽しいと思える時間にする工夫が必要です。ここでは、歯磨きを嫌がる犬への対応について解説します。

口を触られることに慣れさせる

犬の口周りは、とても敏感な部分。そのため、口に触られること自体を嫌がる犬は多くいます。まずは、スキンシップの時間をたっぷりつくって、犬との信頼関係を築くことが大切です。

スキンシップ中にさりげなく歯茎や口周りを触ってみましょう。口周りを触られることに慣れてきたら、唇をめくって歯や歯茎を触ってみて、口の中をチェックしてみてください。

おやつで「歯磨き」=「いいこと」に

少しずつごほうびを食べさせながら口の中に指や歯ブラシが入ることに慣れさせ、歯磨きを楽しいものと認識してもらいましょう。

おやつを与える以外にもお気に入りのおもちゃで一緒に遊ぶ、散歩に行くなど、愛犬が喜ぶことと歯磨きをセットにしておこなうのがおすすめです。

短時間でこまめにおこなう

しっかり歯磨きしたいからといって、長時間磨くのはNG。とくに歯磨きをはじめたばかりのころは、歯磨き中にじっとしていることも難しいでしょう。なるべく手早く済ませるように心がけてください。

はじめのうちは短時間で回数を増やして少しずつ磨き、だんだんと口元を触られることや歯ブラシに慣れていってもらいましょう。

あまりにも嫌がる場合は口内のトラブルが原因かも

口周りを触られることや歯磨きを過剰に嫌がる場合は、口内トラブルが発生している可能性も考えられます。

その場合はできるだけ早く動物病院に相談し、適切な処置が受けられるようにしましょう。

犬の歯磨き用便利グッズ

犬用ガム
口元を触らせてくれない、歯磨きを嫌がるからといって飼い主がケアを諦めてしまうと、愛犬の口内の健康が保てなくなってしまいます。

歯ブラシを使った歯磨きがベストなのはいうまでもありませんが、愛犬がなかなか歯磨きに慣れない場合は、デンタルケアのできるグッズを活用してもいいでしょう。忙しくて、歯磨きする時間がない場合にも便利です。

歯磨き用のシートやガーゼ

歯磨き用シートを指に巻いて歯をこすることで、歯の表面に付いた歯垢が簡単に落とせます。直接指を口に入れるので、歯ブラシが苦手な犬でも比較的歯磨きしやすいでしょう。

歯磨き用シートに歯磨き用のジェルやペーストを塗るのも有効です。犬が喜ぶ味のものが多いので、歯ブラシの前段階として活用するといいでしょう。

また、使い捨てできる市販の歯磨き用のシートは、外出先などで歯磨きする場合に便利です。

歯磨き用ガム

歯垢を落とす効果の期待できる歯磨き用ガム。おやつとして与えられるので犬も喜びますが、与えすぎてカロリーオーバーにならないよう与える量に気を付ける必要があります。

大きさによっては丸飲みしてのどに詰まらせる心配もあるので、必ず飼い主の目の届く範囲で手に持って与えてあげてくださいね。
また、効果がありそうだからといってかたいガムを与えるのは、気を付けましょう。かたすぎるものは、歯が欠けてしまったり折れてしまったりする可能性があります。

本来、歯磨き用ガムは歯磨きの補助的アイテムとして使うものです。すべての歯垢を落とせるわけではないので、この点は覚えておきましょう。

ライオンペット株式会社 遠山先生

遠山洋美 先生

歯磨きガムは、噛んだガムが歯にあたって歯垢を落とすものですので、噛む回数を増やすためには、手で持って与えることが重要です。飼い主さんが角度を調整して、いろんな歯で噛ませるようにしましょう。

歯磨き用おもちゃ

噛んで遊びながら歯垢が落とせるおもちゃは歯磨き用ロープのほか、木製やラバー製、自然素材を使ったものなど、さまざまな商品が市販されています。

おもちゃだけでは歯磨きの効果が十分とはいえませんが、遊びながらケアできるので犬がストレスに感じることはありません。ただし、おもちゃの細菌繁殖には注意が必要です。こまめに洗って、清潔を保ちましょう。

口臭対策スプレー

口腔内にスプレーして、香りで口臭を軽減するアイテムです。簡単で使いやすいので、犬にかかる負担が少ないというメリットもあります。

獣医師に聞いた! 犬の歯磨きについてのQ&A

愛犬が歯磨き用のシートを誤飲してしまったら?
丸のみしたのか、縮れた小さな破片を飲み込んだのか、誤飲してしまったものの大きさを確認してください。ガーゼやシートを丸ごと飲んでしまった場合など、自己判断せず、すぐに動物病院に連れて行きます。

小さな破片である場合も、しばらくは体調に変化がないかをじっくり観察し、何か不安がある場合にはやはり動物病院での受診をおすすめします。
とくにむし歯になりやすい歯は?
犬は歯垢が歯石になりやすく、歯周病にはなりやすいですが、むし歯にはなりにくいと言われています。比較的むし歯が見られる歯は、奥歯のように平たい部分がある歯です。
おすすめの歯ブラシは?
犬の歯ブラシはお口の大きさに合ったサイズのもので、ブラシの毛は柔らかいもの、また、歯周ポケットまで届く毛先の細いものがおすすめです。
何分磨けばいい?
基本的に何分という基準はないです。我慢させて長時間歯磨きすると歯磨きが嫌いになりますので、犬が嫌がらない範囲で、できるだけ短時間で終わらせることがポイントです。

もし歯石が付いてしまったら?

歯 診察 犬
歯石が付着してしまうと、歯磨きや自宅でのケアでは除去できません。

歯茎が赤くなっている、歯石が付いているなどの場合は、一度獣医師に相談するのがおすすめです。自宅での歯石除去は危険が伴うので、絶対にやめましょう。

麻酔下での歯石除去

歯石除去の処置の間に犬がじっとしているのは難しいため、動物病院では原則として全身麻酔をしたうえで処置がおこなわれます。

歯垢や歯石の除去には、超音波スケーラーという器具を使用し、歯石の除去、歯周ポケットの洗浄、歯の表面の研磨という流れで処置をおこないます。

獣医師からのメッセージ

「難しい」と感じている飼い主さんも多い犬の歯磨きですが、焦らずポイントを押さえてチャレンジすれば、少しずつ慣れてきてくれるはずです。

〇ごほうびを上手に使うこと
  ごほうびを使って歯磨きへの抵抗を減らします。
〇たくさん褒めること
  「いい子」「よくできたね」など、明るい声で言葉をかけます。
〇無理やり行わなず、楽しみながらやること
  明るくリラックスした態度でおこない、愛犬の緊張を取り除いてあげます。
〇完璧を目指さないこと
  あまり力を入れ過ぎず、できる範囲で取り組んでいきます。
〇習慣にすること
 子犬のうちに習慣づけるのがベストですが、成犬やシニア犬からのスタートでもあきらめずにお口へのタッチからはじめます。

まとめ

子犬 歯磨き
犬の歯磨きは、最初はうまくいかないかもしれません。しかし、犬の歯磨きは口内の健康維持にとても大切です。歯磨きを少しずつ習慣化して、きれいな歯をキープできるようにしましょう。