犬が飛びつく理由

笑顔の犬
愛犬は決して飼い主さんを困らせようとして飛びついているのではありません。飛びつきたくなる理由があります。
もし愛犬に飛びつき癖があるなら、どんなシーンでよく飛びつくのか考えてみましょう。飛びついてくる場面や飛びつき方で、愛犬の心理が見えてきます。正しく理解し、落ち着いて適切に対応しましょう。

感情表現(嬉しい、興奮)

  • 飼い主さんの帰宅時に玄関まで迎えに来てぴょんぴょん跳ねるように飛びつく
  • 散歩中に出会う人や犬への興味から、しっぽを振りながら飛びつく
  • 遊びの開始時や途中で興奮して飛びつく

これらはすべて、嬉しいなどの感情の高ぶりからくる飛びつき行動です。

運動欲求が満たされない状況が続いていると、これらの感情と一緒にあり余った体力を一気に発散させようとするため、強めの飛びつきになることが多いので要注意です。
また、吠えながら飛びつくこともしばしばあります。

本能(動くものを追う)

  • 遊んでいる最中に、おもちゃを追って飛びつく
  • 目の前で動く手を追いかけて飛びつく

これらは動くものを追いかけて捕らえる犬の本能からくる飛びつき行動です。
飼い主さんが犬に噛まれたくないものを取り上げたときや、甘噛みされた手を引っ込めたとき、犬はそれを追いかけて飛びつくことがあります。

学習(飛びつくとよいことがある)

  • 遊んでほしいときに、毎回飼い主さんへ飛びつく
  • 抱っこしてほしいときに、毎回飼い主さんへ飛びつく

このような飛びつきは「飛びつくと自分にとってよいことがある」と学習した結果の飛びつき行動です。
嬉しいなどの感情表現や本能での飛びつきが学習によって強化され、なにかを要求する際は飛びつくと、飼い主さんが応じてくれると理解している状態です。

警戒心や恐怖心

  • 玄関に近づいた人に唸りながら飛びつく
  • 散歩中、バイクやすれ違う犬が至近距離に近づいた瞬間に飛びつく

これらは対象物に対しての、警戒心や恐怖心からくる飛びつき行動です。
自分のテリトリーに入ってくる見知らぬ人や犬、さらには苦手なものや音を追い払うために飛びつきます。

犬の飛びつきはやめさせるべき?

犬 マテ
結論からお伝えすると、やめさせたほうがよいです。

ぴょんぴょん飛び跳ねる姿はかわいらしく、問題行動とは思われにくい犬の飛びつき行動ですが、放置することで思わぬトラブルにつながります。

危害や迷惑を与えてしまう

飛びつきは、相手を直接押し倒してしまうだけでなく、予想外の出来事に驚かせて転倒させてしまうといったリスクも考えられます。もちろん飼い主さん自身が倒される危険性もあります。

子犬のころは体が小さく、大きな被害になっていなかったとしても、飛びつきが習慣化すれば、体が大きく成長してからも飛びつき、事故やケガにつながる可能性が高くなります。
大きな問題に発展する前に、子犬のころから飛びつきはやめさせるようにしましょう。

ケガのほかにも、愛犬の足についた泥や土で洋服を汚してしまう可能性もあるため、注意が必要です。

足腰に負担がかかる

飛びつき(とくに垂直方向へのジャンプ)は、犬自身の体に大きな負担がかかります。
腰や関節への負荷は大きく、椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼、股関節脱臼などにつながる危険性があるため要注意です。

飛びつきをやめさせる

犬のしつけ
ただ単に「ダメ」と一言いうだけで、飛びつきをやめさせることはなかなか難しいものです。どうしたらやめさせることができるか、しつけのポイントを紹介します。

ルールを教える

愛犬に「どうしたらよいことが起きるか」をわかってもらうために、しっかりルールを教えることが重要です。

よくありがちなのが、飛びつくことを「ダメ」と一言いうだけで終わらせてしまうパターンです。この方法はその場をやり過ごすことはできても、何が正しいことなのかを、愛犬が納得する形で教えてあげられていないため、同じようなシチュエーションでまた飛びついてしまいます。

たとえば、愛犬が構ってほしくて飛びついているのであれば、飛びついている間は構わず、「おすわり」しているときに構ってあげるようにします。そうすることで、愛犬との共通のルールが出来上がります。

飛び続ける場合は、リードを活用しよう

鈴木 知之

飛びつく学習が身に付いてしまっている場合、「おすわり」させることも一苦労ですよね。そんな場合は、飛びつくようなシチュエーションであらかじめリードを付け、リードを足で踏んでおきましょう。

リードを踏む位置は、愛犬がジャンプしたら瞬間的に首に負荷がかかる位置がベストです。
短すぎるとただ単に飛べないだけですし、長すぎると難なく飛べてしまうので、「飛びついてみたら飛べなかった」というような位置で踏むことを意識しましょう。

飛びついている間は、一切相手をしないようにし、座るタイミングをじっと待ちます。座った直後にご褒美をあげるようにしましょう。もし、ご褒美をあげようとしたときに飛んでしまったら、ご褒美はあげず、再度座るまで待ちます。

これを繰り返していくと、飛びつかずに「おすわり」できるようになっていきますよ。

注意をそらす

警戒心や恐怖心からの飛びつきの場合は、まずは対象物から注意をそらすことが重要です。

飛びつく前段階で愛犬の異変に気付いたら、名前を呼んだり、ご褒美のおやつを使ったりして意識を飼い主さんに向けるようにします。はじめのうちはご褒美をあげながらでもよいので、うまくやり過ごせたらたっぷり褒めましょう。

体力を発散させる

運動欲求が満たされない状態が続くと、興奮から飛びつく機会が増えます。
体力を発散することで、興奮する機会も減り、飛びつきを予防することにつながります。運動欲求がたまる前に、愛犬とたっぷり遊ぶようにしましょう。

「飛びついたらどうする」という考えではなく、「飛びつかないように予防する」という考え方がとても大切です。

飛びつきを予防する

手をつなぐ犬と人
飼い主が気付いたときにはもうすでに飛びついてしまっているというような状態が多く、どうしても後手後手の対応になってしまいがちです。
飛びつかないことを効果的に教えるためには、飛びつきに対して飼い主さんが事前に対策をしておくことが大切です。

飛びつきやすいタイミングを知る

飛びついてから「やってはいけない」と教えようとしても、犬はなかなか学習しません。

まずは、どのような状況で飛びつくのかを把握しましょう。飛びつくタイミングを知ることで、飛びつかれないために事前に準備ができます。

飛びつけないように準備する

飛びつくタイミングがわかっている場合は、事前に以下のような準備をしておくようにしましょう。
  • リードを短く持っておく
  • ケージから出す前にリードをつけ、出す際はリードを踏んでおく
など

ドッグトレーナーに聞いた! 犬の飛びつきについてのQ&A

飼い主のひざ上に甘えて飛び乗ってくることもNGにしないとダメ?
愛犬がせっかく飼い主さんに甘えてくる行動をNGにしないといけないのは心苦しいですよね。なので、OKにしたい場合は「乗っていいよ」の合図を教えてあげましょう

飛びつきはダメと教えている以上、一貫性は重要です。勝手に飛び乗ってくることはNGとし、飼い主さんの合図で乗ることはOKとすれば、一貫性は保たれます。


ただし、垂直方向へのジャンプは腰や関節へ負担がかかります。
普段から足腰に不安を抱えている犬や、足腰の筋力が衰えている高齢犬には、そもそもジャンプを促すことは避けるべきです。飼い主さんが抱き上げ&抱き下ろしをしてあげましょう。
まだ骨格がしっかりしていない子犬も注意が必要です。
帰宅時に飛びついてくるのがかわいくてつい構ってしまう……。やめたほうがいい?
愛犬が飛びつきながら熱烈にお出迎えをしてくれるのは嬉しいものですが、飛びつきに対してリアクションを返してしまうと、「飛びつけば構ってくれる」「飛びついたことを喜んでくれている」と勘違いしてしまいます。

愛犬に「飛びつくとよいことがある」と学習をさせないことが大切です。「ダメ!」「イケナイ!」という声がけも、愛犬がその意味をしっかりと理解していない限り、構ってくれると勘違いする原因になるので、無視を徹底しましょう。

まとめ

抱っこされる犬
飛びつきは、感情表現や本能に基づくもののため、犬からすれば自然な行動です。ただ、人間との生活のなかでは、思わぬケガやトラブルにつながるリスクもあります。
「飛んではいけない」とただ単に伝えるだけでは犬は納得できないので、「飛ぶよりもこうすると褒めてもらえる」と教えてあげるようにしましょう。褒めて教えることができるので、愛犬との関係性もより深まっていくはずです。飛びつきを改善し、愛犬との絆を深めていきましょう。