犬がトイレを失敗(粗相)してしまう理由7つ

トイレを失敗したしたヨークシャーテリア
犬が急にトイレを失敗するようになるケースは珍しくありません。「今までちゃんとできていたのに……」と思うと、残念な気持ちになったり、「なにがいけないんだろう」と、焦ったりしてしまうかもしれません。

ただ覚えていて欲しいのは、愛犬のために一番はじめにするべきことは「原因究明」だということです。
決して叱らず、様子を観察し、愛犬の抱えている問題を見つけ出しましょう。


なぜ愛犬はトイレを失敗するようになってしまったのでしょうか。考えられる理由は主に以下の7つです。
  • 体の不調
  • マーキング
  • 成功しても褒められなくなった
  • トイレ以外の場所でするメリットがある
  • トイレの場所にネガティブな印象がついた
  • トイレの失敗を叱られた
  • 環境や家族の変化

1.体の不調

急なトイレの失敗は、病気による症状が原因となっている可能性があります。
膀胱炎や結石、ホルモンの異常などにより、頻尿や血尿、過度な水分摂取といった症状が出るためです。

この場合は何より治療を優先させます。明らかな原因が思い当たらないようなときは、普段と違った様子がないか、まずは愛犬をよく観察することからはじめましょう。

2.マーキング

マーキングとは、縄張りづくりや自分のにおい付けのための本能的な行為です。性成熟を迎えたあとの未去勢オス犬や、発情期を迎えた未避妊メス犬で起こりやすいです。

体の変化によって起こるため、飼い主さんは何が原因なのか、気付くのに時間がかかる場合も多いです。原因の一つとして普段から頭の隅に入れておくとよいでしょう。

3.成功しても褒めてもらえない

犬が「褒めてもらいたい」と思わなくなることで、失敗につながるケースです。

トイレを覚えるまでは、成功したときにたっぷり褒めてもらっていたのに、トイレに慣れてうまくできるようになった途端に褒められなくなると、失敗が増えはじめることがあります。

4.トイレ以外の場所でするメリットがある

トイレでするよりも、トイレ以外の場所でするほうがメリットがあると愛犬が感じた場合に起こります。

きっかけはさまざまですが、たまたま失敗したときに飼い主さんが「あー!」などの反応とともに駆け付けると、トイレでするよりも「喜んでくれる」「飼い主さんが注目してくれる」と勘違いすることがあります。

前述の「褒められなくなった」ことがきっかけとなり、その後、飼い主さんの気を引くために失敗するようになることはよくあるパターンです。

5.トイレの場所にネガティブな印象がついた

「トイレで排泄をしようとした瞬間に大きな音がしてびっくりした」などのネガティブな体験と、トイレの場所が結びついてしまった場合も、失敗が増える原因になります。

6.トイレの失敗を叱られた

たまたまトイレを失敗してしまったときに強く叱ると、「排泄すること自体を叱られた」と感じてしまう子もいます。

そうなると、飼い主さんに隠れて排泄するようになり、急に失敗が増える原因につながります。

7.環境や家族の変化

引っ越しをした、家族構成が変わったなど、生活環境に変化があったタイミングであれば、それが原因となっている場合があります。

そのような変化に伴って、トイレの場所が変わったことによる混乱や、構ってもらえなくなったストレスから失敗が増えることも考えられます。

犬がトイレを失敗しないようにする方法(粗相対策)

トイレットペーパーと子犬
粗相をする原因や理由について、確信をもてるまでには少し時間がかかるかもしれません。
それでも、思い当たることが出てきたら、焦らず一つずつ改善を試みましょう。

体調不良を疑う

さまざまな対策をはじめる前に、まずは体調面を気にするようにしましょう。急に粗相が増えるような場合、体の不調と関連していることが多くあるためです。

頻尿、尿の濁り、血尿、排尿痛、過度な水分摂取など、少しでも普段と様子が違うようであれば、かかりつけ医に相談しましょう。

トイレのタイミングを把握する

体調面に問題がないようであれば、基本的には再度トイレを教え直すのが一番の近道です。教え直す際は、トイレのタイミングを把握することを目的に、トイレノート(排泄記録)をつけることをおすすめします。

タイミングが把握できたら、そのタイミングでトイレに連れて行くようにし、成功したことをたっぷり褒めましょう。失敗したときは、目線を合わさず黙って片付けるようにします。

トイレノートとは?

鈴木 知之

トイレノートとは、何時にどこで排泄をしたかを記入しておくものです。できれば時間だけではなく、前後の行動(睡眠、ごはん、お散歩、など)も一緒に記入しておくと、排泄のタイミングがより把握しやすくなりますよ。

「寝起き5分以内で必ずおしっこが出る」「ごはんを食べ終わってから30分以内でうんちが出やすい」というように、傾向を掴めれば成功につなげやすくなります。

また、成功を「〇」、失敗を「×」というように区別して記入しておけば、成功率の把握もできます。目標も立てやすくなるのでおすすめですよ。

トイレ周りをチェックする

犬はやわらかい感触の場所で排泄をしたがる傾向があるため、ラグや足ふきマット、やわらかいカーペットなど、特定の場所で失敗が増えてしまっているケースが多くあります。
失敗の原因になっているようであれば、トイレの場所を再び覚えるまでは片付けておくのがおすすめです。

また、トイレ周辺が騒がしい場合も、設置場所を再検討するとよいでしょう。

愛犬への接し方を見直す

トイレ含め、愛犬のできることが増えてくると、飼い主さんは「愛犬はできて当たり前」という感覚になりがちです。その結果、褒めるべきところで褒めなかったり、失敗したときに怒ってしまったりします。

飼い主さんは怒っているつもりでも、愛犬が「失敗したら構ってもらえた」と思うようになると、どんどん失敗が増えることになります。
愛犬への接し方が無意識のうちに変わっていないか、見直してみましょう。

トイレの掃除をこまめにする

汚れたトイレシートの上で排泄をしたがらない子は案外多いものです。シートをこまめに変えるようにしましょう。

トイレ周りが不衛生であることも原因となっている可能性があります。隅々までチェックし、定期的に掃除をしましょう。

失敗したときのにおいを残さない

犬はにおいを一つの重要な手がかりとしてトイレを覚えます。トイレ以外の場所に、においが残っていると、その場所をトイレと勘違いしてしまい、何度も失敗を繰り返す可能性があります。

トイレを失敗してしまった箇所は、においを残さないように忘れずに掃除しましょう。

犬のトイレの再トレーニングをするには

トイレシートのにおいを嗅ぐ子犬
トイレの場所が変わった場合や、あらためて正しい場所を認識してもらいたいときには、基本に立ち返り、再度トイレトレーニングをすることが一番の近道です。

以下のポイントに気を付けながら、焦らず丁寧に教え直してあげましょう。

排泄のサインを見逃さない

犬は排泄したいときに「トイレサイン」と呼ばれるしぐさを見せます。地面や床に鼻を近づけてクンクンにおいを嗅いだり、ぐるぐる回ったり、そわそわしたりするのがサインです。
このようなサインを見かけたときには、トイレに連れて行くようにしましょう。

サインを見逃さないために、「トイレノート」で記録をつけてある程度タイミングを把握しておくのも一つの手です。

トイレへ連れて行く(誘導する)

愛犬のトイレサインを見かけたり、いつも排泄しているタイミングが訪れたりした場合には、飼い主さんがトイレへ連れて行きましょう。
はじめのうちは、トイレまで連れて行きますが、愛犬の理解度に合わせてトイレへの誘導に切り替え、排泄したくなったら自分の足でトイレに行くようにしていきます。

また、トイレの場所にネガティブな印象を抱いている可能性があるときは、思い切ってトイレの場所を変え、新しいトイレへ連れて行くことも検討しましょう。

成功したらしっかり褒める

トイレがうまくできたときはしっかり褒めてあげましょう。褒めるのは、トイレ直後であることが大切です。
うまくできたら褒めることを繰り返して成功体験を再度積ませてあげましょう。

もし失敗してしまった場合は、黙って片付けるようにします。
失敗したときに、飼い主さんは「あー!」などと声をあげてリアクションをとってしまいがちですが、そのリアクションは犬からすると、大好きな飼い主さんが「喜んでくれている!」と勘違いする原因にもなるため、十分注意しましょう。

愛犬が自由に動き回れるスペースを調整しよう

鈴木 知之

トイレの失敗と、愛犬が自由に動き回れるスペースには大きな関係があります。

失敗が増えているような状況であれば、フリースペースはある程度狭めて、愛犬が自らトイレに行くようになってきてから、少しずつフリースペースを広げていきましょう。

スペースを区切れるドア付きのゲートを使うと、フリーに動き回れるエリアを簡単に変えることができるので便利です。
「そろそろトイレをしそうだな」というタイミングで、トイレがある狭いスペースへ愛犬を移動しておき、トイレができたらドアを開けて広くしてあげる、というような柔軟な使い方ができるのでおすすめですよ。
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犬のトイレトレーニング こんな行為はNG

しょんぼりする犬
トイレの再トレーニングに限らず、叱ることはNGと考えましょう。
今までできていただけに、叱りたくなる気持ちはわかりますが、叱ることで犬に心理的負担をかけると、ますますトイレができなくなってしまう悪循環に陥る可能性が高いからです。

ここでは、ついやりがちな飼い主さんのNG行動をピックアップします。

失敗するたび「トイレ」という言葉を教え込む

トイレのしつけをする際に、「トイレでしてほしい」という思いから「トイレ」という言葉を多用しがちです。

失敗時に何度も使うと、言葉自体にネガティブな印象がついてしまうだけでなく、トイレの場所のことを指しているのか、排泄行為を指しているのか分かりづらく、混乱を招きやすいため注意しましょう。

トイレに連れて行き、排泄をじっと待つ

トイレトレーニング中に排泄するまでじっと待っていると、プレッシャーに感じてしまう子や、逆に飼い主さんが構ってくれるかもと変に期待してしまう子もいます。

安定してトイレができるようになるまでは、できるだけ愛犬が自然な形で排泄できるよう、優しく見守ることを心がけましょう。

失敗したことを強く叱る

失敗直後に強く叱られると、排泄行為そのものに恐怖や不安を覚え、かえって失敗が増えたり、排泄を我慢することで病気になってしまったりすることがあります。
失敗したときの対応は十分注意しましょう。

失敗した場所に連れて行き責める

失敗したのを発見したとき、粗相した場所に連れて行き、ダメだと言いながらにおいを嗅がせるのはNG行為です。まったく無意味なことであり、むしろ状況は悪化してしまいます。
失敗したときは、黙って片付けるようにしましょう。

ドッグトレーナーに聞いた! トイレの失敗に関するQ&A

失敗する場所がいつも同じ。消臭しても効果がないときの対策は?
特定の場所で失敗をしているような場合、その場所を2つ目のトイレにしてしまうことも効果的です。

セカンドトイレを用意する場合、飼い主さんの生活動線に影響がない場所かどうか考えてから設置しましょう。
多頭飼育を始めた途端、先住犬のトイレの失敗が増えた。どうしたらいい?
これはお悩みとしてよく聞くケースですね。
考えられる原因と対策をいくつか挙げます。焦らず対応していきましょう。

①共用トイレ
トイレが共用であることを気にするのは個体差があります。ただ、自分以外の犬が排泄したあとのトイレを嫌がる子は意外に多いもの。
別々のものを用意して、それぞれの場所をきっちり分けて教えてあげるか、共用し続けるのであれば、トイレをこまめに掃除し、トイレの大きさを少し広げてあげるとよいでしょう。

②ストレス
新しい子の存在をまだ受け入れられず、ストレスを感じて粗相が増えている可能性があります。ストレスは新しい子の存在だけではなく、大好きな飼い主さんとの関わりが減ることも大きな要因の一つとなります。
しばらくの間は、トイレだけでなく生活空間自体も分ける、また、遊びやごはんの際は、先住犬を優先にしてあげるなどの配慮をしてあげましょう。

③嫉妬心
新しい子が来たことで、自分への関心が薄れたと感じ、飼い主さんの気を引くために粗相をするということがあります。粗相をすることで「片付けに来てくれる=関心を向けてくれた」と学習すると、粗相を繰り返すようになっていきます。
先住犬に関わる時間もしっかり確保するよう意識していきましょう。

そのほか、新入りの子を迎えたことで、これまで通りのトイレができず排泄を我慢して泌尿器系の病気になってしまっていた、自分の縄張りをマーキングで主張するようになったといったケースも考えられます。

多頭飼いをする際は、スキンシップの時間を1頭ずつたっぷりとることを心がけましょう。

まとめ

トイレができたポメラニアン
トイレの失敗が急に増えたとお悩みの飼い主さんは少なくありません。解決への近道は、原因は何かを見極め、「正しいことを教え直す(再学習させる)」ことです。
今までできていたのだからちゃんと学習できるポテンシャルは持っている、とポジティブにとらえ、焦らず基本に立ち返りましょう。結果的に、愛犬との絆を深めることにもつながっていくはずです。