マーキングと排尿の違いは? 家の中でもするの?

マーキングをする犬
排尿は膀胱内のおしっこを一度に外へ出す行為なのに対し、マーキングは、室内外問わずさまざまな場所で、少量の尿を複数回にわけて排出するのが特徴です。
マーキングには意味があるため、まずはその意味を理解しましょう。

犬がマーキングする3つの意味

見上げる子犬
犬がマーキングする理由を3つ紹介します。
慌てて対処しようと考えるのではなく、犬の気持ちを理解することからはじめましょう。

1.縄張りの主張

犬は、おしっこのにおいを付けることで自分の縄張りを主張する習性をもっています。
オス犬が足を上げておしっこをするのは、より高い位置におしっこをかけるためです。高い位置ほど、体が大きくて強いということをほかの犬へアピールできるといわれています。

マーキングをしはじめる時期は個体差があり、だいたい生後6~8カ月齢くらいにはじまるケースが多いです。オス犬の場合、性成熟とともに縄張り意識が芽生えてくるため、その時期とマーキング行動が重なることがほとんどです。
この縄張りの主張については、オス犬が一般的ですがメス犬でもする子はいます。

2.オスとメス相互の情報交換

オス犬のマーキングは、発情中のメス犬へ自分の存在を知らせる意味もあります。高い位置へのおしっこは縄張りの主張だけでなく、メス犬へアピールするのにも都合がよいのです。

メス犬の場合は、発情期と関連があり、子孫を残すための本能でマーキングをします。メス特有のフェロモンが含まれたおしっこをすることで、オス犬にアピールしている可能性があります。

3.気持ちを落ち着かせる

環境変化などによるストレスでもマーキングをする場合があります。
たとえば、引っ越し直後などにマーキングをはじめることがありますが、これは、新居に自分のにおいがないことによる不安をやわらげるためといわれています。

犬は自分のにおいを嗅ぐことで落ち着く性質をもっているため、緊張や興奮で気持ちが高ぶってしまったときに、それを鎮める目的でもマーキングをします。

マーキングしたときの対応と防止策

おむつを着用する犬
マーキングは本能的な行為のため、コントロールすることはなかなか簡単ではありませんが、あちこちにおしっこをする性質上、そのままでよいというものでもありません。
マーキングしたときの適切な対応や防止策についてご紹介します。

家の中での行動範囲を限定していく

犬は、家を自分のテリトリーとして認識します。家の中での行動範囲が広いと、その分「自分の縄張りすべてを守らなくてはいけない」という意識も高くなります。
行動範囲を限定することで愛犬にとってのテリトリーも狭くなり、マーキングの箇所や回数が減っていくでしょう。

愛犬が出入りできる部屋を限定したり、ゲートなどで区切ったりして、自由に動けるスペースを少しずつ狭めていくと効果的です。

L字型トイレを使用する

マーキング対策として、L字型トイレを使うのも一つの手です。
「ここでだったら足を上げてもいいよ」と愛犬に教えることで、あちこちにマーキングせず、トイレの場所だけで済ませるようになります。

マーキングしても叱らない

マーキングは本能的な行為のため、叱ったらやめるようなものではありません。むしろ、飼い主さんとの関係を悪化させてしまう原因となるため叱るのはNGです。

その代わり、決められたトイレでちゃんとできたときはたっぷり褒め、根気強く教えていきましょう。

散歩中はマーキングしやすい場所に近づかない

散歩中は、塀や壁、電柱、木、ポールなどのマーキングしやすい場所には極力近づかせないようにするために、飼い主さんがペースを握って歩くようにします。
マーキングのための本格的なにおい嗅ぎをしている状態から、飼い主さんへ意識を戻すことはかなり困難です。

犬が電柱などに向かって行こうとしてもそれに従わず、ペースを落とさず前に歩くようにしましょう。

散歩中にアイコンタクトをとれるようにしよう

鈴木 知之

散歩のときに飼い主さんがペースを握ることは、マーキング対策として有効ですが、リードが常にピンと張っている(綱引きのような)状態がずっと続くことは好ましくありません。
リードは短めに持ちつつも、愛犬がにおいを嗅ぎに行こうとした瞬間だけリードが張る状態を意識しましょう。

そのうえで、たまに立ち止まり、止まった瞬間に愛犬の名前を呼んでアイコンタクトをとれるようにしておくと、いざといときに愛犬の行動をコントロールすることができます。
アイコンタクトをとる際は、おやつを使って構いません。目が合ったらおやつを与え、たっぷり褒めてあげましょう。

これを地道に繰り返していくことで、におい嗅ぎに意識が向いても、飼い主さんへ頭がすぐに切り替わるようになっていきます。

マナーベルトなどを利用する

マナーウェア、マナーパンツとも呼ばれており、使い捨てのものや布製のものがあります。ホテルやドッグカフェ、友達の家など、長めに滞在するような場所へ行くときは、マナーベルトを活用すると、もしものときも安心です。

また、大きすぎると外れてしまい、小さすぎると漏れてしまったり、かぶれの原因になります。愛犬に合うサイズをよく見て購入しましょう。

去勢を検討する

オス犬の場合、去勢手術をするということもマーキング対策の一つです。
去勢により一般的にはマーキングが減るといわれていますが、去勢による効果は個体差があることを頭に入れておきましょう。性成熟が早いと、去勢後もマーキングの名残りで足上げが残ることもあります。

マーキング後の対処法

消臭スプレー
犬は自分がマーキングした場所には繰り返しマーキングをする習性があります。屋内のトイレ以外でマーキングをしてしまった場合は、しっかり消臭しておきましょう。

また、散歩中であればおしっこを洗い流す水を持ち歩き、マーキングをしてしまったら、水を流してその場所をきれいにすることが飼い主としてのマナーです。

先輩飼い主に聞いた! 愛犬のマーキングと対策

トイレ
実際にマーキングをする犬はどれくらいいるのでしょうか? 「みんなのブリーダー」で子犬をお迎えした先輩飼い主にアンケートを実施しました。子犬の性別を問わず、304名に回答いただきました。

愛犬はマーキングをする?

愛犬はマーキングをしますか 円グラフ
「マーキングをする」と回答したのは、全体の35%。

なかには、「(マーキング自体はするが)室内のみ(柴犬/4カ月/メス)」「メスは(マーキングを)しないがオスはしている(トイプードル/2歳/メス、トイプードル/3カ月/オス)」といった意見も寄せられました。

マーキングをする場所や性別などによって、状況はさまざまなようですね。
さらにマーキングをする状況や対策についても聞いてみました。

どんな状況でマーキングするの?

・幸い家の中ではしないが、散歩のコースに決まった場所がある(マルチーズ/2歳/メス)

・去勢前はリビングで自由に遊ばせているときに、ソファーでしてしまっていた。今は去勢したので、マーキングしない。(パグ/1歳/オス)

・いつもいるリビングではしないが、廊下や見慣れない部屋に行くとマーキングする。去勢後はしなくなった。(チワワ/2歳/オス)

・女の子なのに片足をあげて小分けにしておしっこをしていた。家の中でなければよしとしていたが、シニア期になってからはなくなった。(柴犬/8歳/メス)

どんなマーキング対策をしていた?

・マーキングしそうな場所に障害物を置いた。(パグ/1歳/オス)

・すぐに除菌スプレーを吹きかけ、ていねいに拭いていました。(ポメラニアン/12歳/メス)

・獣医師に相談したところ、去勢手術をすればなくなると言われた。手術のメリットがほかにもあることを知り、手術をすることにした。術後はぴたりとなくなった。(チワワ/2歳/オス)

・成長するに従い、散歩中にトイレをするようになり、自然と家の中ではトイレもマーキングもしなくなった。(柴犬/8歳/メス)

ドッグトレーナーに聞いた! マーキングに関するQ&A

マーキングかと思っていたら実は膀胱炎だった。見分け方は?
膀胱炎を患っている場合は、マーキングのように少量の粗相を頻繁にするため、勘違いしてしまうケースも少なくありません。
膀胱炎の場合、排尿時に痛みがあって「キャン」と声を上げたり、尿に膿のようなものが混ざっていたり、血尿が出たりすることもあります。
疑わしい場合は、マーキングと決めつけずに、一度かかりつけ獣医さんに相談するとよいでしょう。
散歩中にマーキングすることが多い。やめさせる方法はある?
屋外でのマーキングが続いている場合は、「外はどこでもトイレOKな場所」と考えていることが多いです。
散歩前に必ずトイレを済ませ、外でマーキングする機会を減らしましょう。

また、先に述べたように、マーキングしやすい場所に近づかない、飼い主さんのペースで歩く、たまにアイコンタクトをとるといったことも意識してみてください。

まとめ

子犬
飼い主にとっては問題視しがちなマーキングですが、犬にとってはきちんと意味のある行為です。いざマーキングがはじまると焦ってしまう方も多いので、犬を迎える際はあらかじめマーキングについて正しい知識を身に付けて、対策を考えておくとよいでしょう。
ストレスでもマーキングが起こる場合もありますし、マーキングではなく膀胱炎だった、というケースもあります。正しい理解のもと、対応していくよう心がけていきましょう。
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