春先は犬もストレスを感じやすい

落ち込む犬
転勤や進学など、春先は飼い主の生活環境に変化が訪れる季節。
その変化がお留守番や散歩、就寝などの犬の生活時間にも影響し、ストレスとなって、体調を崩すことがあります。

犬がストレスを感じたときの症状・行動

症状

  • 元気がなく、ふさぎ込んで見える
  • 食欲が低下し、フードを残す
  • 下痢、嘔吐をする

行動

  • あくびが増える
  • 物音などに敏感になり、過剰に吠える
  • 留守番時に部屋を荒らす
  • 自分のしっぽを追いかける
  • 過剰なグルーミング


このような様子が繰り返しみられる場合、ストレスが溜まっている可能性があります。
早めに動物病院に行き、ストレスのほかに原因はないかチェックしてもらうとともに、ストレスが原因と診断されたら適切に対処してあげましょう。

家庭でできるストレス軽減ケア

コミュニケーションをとる

愛犬とのコミュニケーションを増やすようにしてみましょう。
やさしい言葉かけ、丁寧な接触など十分なコミュニケーションは、愛犬のストレス軽減につながります。

休める空間を作ってあげる

とくに環境が変わったときなどは、愛犬は落ち着かない思いをしていることが多いようです。
部屋の隅など人目が気にならない場所にベッドを置いて、ゆっくり休ませてあげましょう。

適度な運動

犬は体を動かすのが好きな動物です。
適度な運動は気分転換になり、緊張を和らげられるため、散歩などの運動にこまめに連れていきましょう。

雨の日は庭や室内などでボール投げなど、身体を動かせる遊びをしてあげるのもおすすめです。

体調変化を見逃さず、日ごろからストレスケアを

高野 航平

ワンちゃんは季節の変わり目やちょっとした環境の変化でストレスを感じ、体調を崩してしまいやすいどうぶつさんです。元気消失や食欲不振など、いつもと違う様子が見られたら、まずは受診を検討しましょう。

また、日頃から適度な運動量を確保し、スキンシップを取ることでストレスがたまらないようにしましょう。

春にかかりやすい病気

診察を受ける子犬
冬から春先にかけての時期は、朝晩の寒暖差が大きく、自律神経の不調から体力や免疫力が低下しやすくなります。持病のある子は症状を悪化させてしまう場合も。
ここでは、春から夏にかけて増える病気を紹介します。

アレルギー

食べ物やハウスダスト、カビ、花粉などのアレルギーは犬でもあり、春先は症状が重くなりやすいものです。

とくにスギやヒノキ、ブタクサの花粉、ダニ、カビなどは4~5月にかけて増えるため注意が必要です。

花粉には空気清浄機の設置や、室内に持ち込まないよう玄関などでの衣服のケアが効果的。そして犬は散歩後にブラッシングをして、布などで全身を軽くふき取ってあげましょう。

皮膚炎

犬は春から夏にかけて、換毛期を迎えます。
その際、古くなった皮膚がフケとして多く出るため、手入れを怠ると皮膚炎の原因になることがあります。
スムーズな換毛と愛犬の健康のために、こまめにブラッシングをしてあげましょう。

また、ノミによる皮膚炎にも注意が必要です。暖かくなり、外にいるノミの活動が活発化してきます。月1回の予防薬の投与や部屋のこまめな掃除などをおこない、しっかりと予防することが大切です。

胃腸炎

暖かくなってきたと思っていも、朝晩の冷え込みやすい春先は下痢や嘔吐など胃腸の症状を引き起こしやすくなります。
季節的な原因とも限りませんので、早めに動物病院で診断を受けましょう。

熱中症

春先の気温は不安定で、突然、気温が上昇することもあります。
とはいえ、30℃を越えるほどの暑さはあまりなく、飼い主の管理で予防できるものがほとんどです。
気温が高い日はこまめに水分補給をおこない、短時間でも犬を車内に放置しないようにしましょう。
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春先の散歩の注意点

菜の花畑にいる犬
暖かくなると、愛犬と外へ出かける機会も増えるもの。
ここでは、春に咲く花や生き物のなかで、犬に危険なものを紹介します。

犬が食べると危険な春の植物

スイセン

スイセンは、花、葉や茎、球根と植物全体に毒があり、食べることで嘔吐や下痢、神経麻痺、接触することで皮膚炎をおこします。

また、スイセンと同じ仲間のスノードロップやスノーフレーク、彼岸花も同じ毒があります。雑草のように道端に育っていることもありますので、注意が必要です。

チューリップ

主に球根に毒が含まれ、食べることで激しい皮膚炎や口内炎、摂取量が多いときは神経麻痺から心不全を引き起こすこともあります。

ユリ

ユリは品種に関わらず、犬猫にとって毒性の強い植物です。
嘔吐や下痢、神経症状、腎不全から尿毒症、昏睡から死に至る場合もあります。
球根や茎、葉、花びらなどすべての部分が有毒ですので、決して食べないように気をつけてあげてください。

アサガオ

種を摂取することで、下痢や嘔吐、血便などの消化器症状を起こします。

西洋アサガオやマルバアサガオでは、抗精神作用をあらわします。
花が似ていることでその名がついたチョウセンアサガオは、アサガオと別の科ですが、猛毒を含みますので犬には絶対に食べさせないように注意してください。

犬が触ると危険な春の生き物

毒蛇

日本国内に生息するヘビの中で、毒をもつのはマムシヤマカガシハブの3種類です。
ヘビは春になると活動が活発化し、遭遇する可能性が高くなります。

マムシは咬まれた直後から傷口が腫れ、内出血が起こります。毒が体内に回り出すとリンパ節も腫れてきて、めまいやふらつき、意識混濁、血圧低下などの症状を起こし、重症例では死に至ります。

ヤマカガシは比較的おとなしい蛇ですが、毒性はマムシより強く、口腔内だけでなく首のまわりにも毒液が出ています。

ハブは沖縄地方に生息する毒ヘビで、毒性はマムシよりも弱いものの、体が大きく牙も長いため、噛まれると大量の毒が注入されるという特徴があります。噛まれると数分で患部が腫れ、激しい痛みを伴います。毒により筋肉や血管などを破壊されてしまい、治療しても後遺症が残ることもあります。

基本的にヘビは夜行性のため、昼間は藪などに潜み、休んでいます。
うっかり踏みつけて刺激を与えてしまい、咬まれるというケースが多いので、山歩きなどをするときは愛犬が藪の中に入り込まないよう、注意してあげましょう。

万一、藪に入って突然、身体が腫れあがってきたら、急いで動物病院へ行ってください。

ハチ

ハチの攻撃性がもっとも強くなるのは晩春から真夏、初秋までの、気温の高い時期です。
大きく派手な体色が目立つスズメバチ、細長い体が特徴的なアシナガバチは攻撃性、毒性が強く、巣のそばを通りかかっただけで攻撃されることもあります。

ハチなど昆虫の巣と思われるものを見つけたら近寄らず、そばを飛んでいるときも手で払わずに、速やかにその場を立ち去るようにしましょう。

散歩中は目を離さない

高野 航平

ワンちゃんは草むらなどに入ることが大好きなどうぶつさんです。不用意に近づけることはせず、必ず飼い主様の目の届く範囲内でお散歩させるようにしましょう。

春は狂犬病ワクチンの季節

狂犬病ワクチンのイメージ

狂犬病とは?

狂犬病とは、狂犬病ウイルスによる感染症で、ウイルスを保有する動物に咬まれたり引っかかれたりしたときに、傷口からウイルスが侵入し感染します。
狂犬病は発症すれば致死率100%という恐ろしい病気で、犬から人に感染することもある人畜共通感染症です。

潜伏期間は犬の場合は2週間~1カ月程度、人の場合は1~3カ月程度です。犬も人も、発症すると約1週間ほどで死にいたります。

予防のために、犬は年1回の狂犬病ワクチンの接種が義務づけられ、人は狂犬病発生国への渡航前に狂犬病ワクチンの接種が推奨されています。

また、万一、狂犬病ワクチン未接種の状態で、狂犬病ウイルスを保有する動物に咬まれたり引っかかれたりした場合は、潜伏期間中に狂犬病ワクチンと抗狂犬病ガンマグロブリンの投与などをおこない、発症を予防します。

これらの処置が間に合わず発症した場合、残念ながら治療法はありません。

春は狂犬病ワクチン

狂犬病ワクチンは、多くの自治体で毎年4~6月ころに集団予防接種を実施しています。
また、動物病院で個別接種を受けることもできます。集団予防接種に連れていくのが難しい場合は、動物病院を利用しましょう。

日本は島国で、他国からの放浪犬が入りにくく、狂犬病が発生していない、狂犬病清浄国です。
1970年以降、国内での犬の発症例はなく、人間の発症例は海外で感染、帰国後発症したものだけです。
万一、愛犬が国内で発症した場合、飼い主のもとで看取ることはできず、保健所に引き渡さなくてはいけません。

狂犬病の発生と感染拡大を防ぎ、愛犬と飼い主が幸せに暮らしていくために、年1回の予防接種を忘れずに実施しましょう。
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獣医師に聞いた! 春に注意したい犬のストレスと病気についてのQ&A

春に引っ越しを予定している。犬のストレスを軽減するために今からできることはある?
ワンちゃんと一緒に新しいお家へお引越しする場合は、移動の際になるべくワンちゃんに負担の少ない方法を検討するとよいでしょう。長距離移動になる際には、乗り物酔いをしてしまうワンちゃんも多いので、こまめに休憩を挟む、適切な温度管理をする、大きな振動を与えないといった配慮をお願いします。

どこか別の場所にワンちゃんを預けてお引越しされる場合には、今のうちからお試しでの預け宿泊を何度かして、預け先の環境に慣れさせておくと安心です。
暖かくなってきたから、留守番中のエアコンはつけなくても大丈夫?
地域によっては春先から気温が上昇する日も多くなります。ワンちゃんの過ごしやすい室温は20度~25度、湿度は50~60%程度です。

室内は熱がこもりやすいため、日中の室温が25度以上と高くなることが想定される日には、あらかじめタイマーなどで冷房を活用していただくことをおすすめいたします。

獣医師からのメッセージ

春先は、環境の変化や気温の変動などで、人間同様ワンちゃんも体調を崩してしまいやすい季節です。ワンちゃんにいつもと違う様子が見られた際には、一過性のことと軽視せず、可能なタイミングでなるべく受診するようにしましょう。
また、日頃からワンちゃんとスキンシップを取り、ストレスを感じにくい環境を整えることも大切です。

まとめ

お花見をする柴犬
気温が上昇する春は、感染症やアレルギーも発症しやすくなる季節です。また、全身を毛に覆われている犬にとって、気温の急上昇そのものがリスクになる場合もあります。
さらに、春は植物や動物が活発に動き出す季節。散歩やレジャーなどの外出先では、昆虫や動植物からの被害を受ける可能性を考えておきましょう。

春は狂犬病予防接種の時期でもあります。予防接種にあわせて健康診断をおこなうなど、この機会に愛犬の健康管理に努めましょう。