愛犬のストレスサイン 10の行動

鼻を舐める犬
ここでは、犬が見せるしぐさや行動に見るストレスサインを10パターン紹介します。このようなしぐさを見せるとき、愛犬はどのような気持ちなのでしょうか。状況と照らし合わせて常時観察していると、愛犬のストレスパターンが見えてきます。一般的なストレスサインと犬の気持ち、対処法について見ていきましょう。

1.目や顔をそらす、背を向ける

どんなとき: 苦手な相手がいる、苦手な状況にある
気持ち: 自分は敵ではない、関係ないと相手にアピールしたい、注目してほしくない
対処法: 犬が視線を外している対象を理解し、犬の気持ちを尊重しましょう。苦手な相手に対してすることが多いですが、気まずい状況にあるなど、ときには飼い主さんから目をそらそうとすることもあるでしょう。そんなとき無理に目線を合わせようとするのはNGです。
目を伏せる犬

2.あくびをする、目を細める

どんなとき: 病院での診察中、爪切りなど苦手なお手入れ中
気持ち: 緊張を解きほぐそうとしている、我慢している
対処法: 受診やシャンプーなど避けられないことについては、我慢しながら受け入れている愛犬を褒めてあげましょう。避けられる物事であれば避けてあげるのも方法です。
あくびする市v場犬

3.固まる、ゆっくり歩く

どんなとき:初対面の犬や人を前にしたとき、怖いことが起きたとき
気持ち: 苦手、不安、怖くて動けない
対処法: 愛犬がストレスを感じている対象からゆっくり離れましょう。

4.体を掻く、ブルブルッと体を揺らす

どんなとき: 飼い主の指示がわからない、お手入れなどで身体を拘束されている、首輪や服などの装着物が不快
気持ち: やめたい、嫌、緊張している
対処法: 愛犬に落ち着いたトーンで声をかけてみましょう。装着物が原因のときは、重さ、素材、サイズなど愛犬に違和感と不快感を与えているものの正体を見つけます。
頭をかく子犬

5.舌でペロッと鼻を舐めたり、口をクチャクチャ動かしたりしている

どんなとき: 慣れないものや状況、緊張するシーンが続くとき、待たされたり、させられていることに飽きたりして、状況を変えたいとき
気持ち: 落ち着きたい、ストレスを和らげたい、相手にも落ち着いてほしい
対処法: ストレスを感じている対象を見つけることが重要です。ストレスの原因を把握できたらつぎは回避できる方法を探ります。

6.人と人、人と物の間などに割って入る

どんなとき: 家族や近くの人が興奮したり不安を感じたりしている(と犬が感じた)とき、危険を感じるとき
気持ち: ケンカをしないでほしい、そっちに行かないでほしい、助けてあげたい
対処法: 犬は身をていして止めに入っていることを理解し、気持ちを切りかえましょう。落ち着いて、犬に安心感を与えてあげてください。

7.しっぽを下げて足の間に巻き込む

どんなとき: 恐怖を感じる音や場所、相手に遭遇したとき
気持ち: 怖い、不安
対処法: 不安を感じているものから離れ、飼い主さんが一緒にいるという安心感を与えてあげましょう。

8.前触れなく粗相をする

どんなとき: 予想外の驚き、恐怖を感じる出来事に遭遇したとき、雷など
気持ち: 怖い、驚き、パニック
対処法: トイレの失敗ではないので叱るのはNGです。原因を突き止めつつ、過剰な反応をせず、いつも通りにやり過ごしましょう。

9.手足を舐め続ける、しっぽを噛む

どんなとき: 運動不足、留守番中など暇なとき
気持ち: 退屈しのぎ、暇、さびしいのを紛らわしたい
対処法: コミュニケーションやスキンシップ、一緒に遊ぶ時間を増やすなど、愛犬と向き合う時間をつくりましょう。ほとんどは飼い主さんが見ていないときにするため、皮膚炎を起こしたり出血させてしまったりと悪化するのが早いです。対策も早めにおこないましょう。

10.舌を出してハァハァと呼吸(パンディング)する

どんなとき: ストレスを感じているとき(※通常のパンディングは、暑い季節やお散歩中に見せる体温調節のための行動です)
気持ち: 緊張している、落ち着きたい
対処法: パンディングは暑い季節や運動時、また、短頭種であればある程度はみられるものですが、ストレスが原因のパンディングは決してよい精神状態ではない可能性があります。重大な疾患の症状である可能性もあるため、軽視と安易な判断は危険です。
愛犬の普段の状態を把握し、少しでも様子がおかしいと感じた場合はかかりつけ医に相談しましょう。

犬のストレスの原因と対処法

不安げな子犬

見慣れない場所やもの、人に接した

知らないところへつれていかれたり、知らない人や犬に遭遇したり、知らない人や犬と長い時間そばにいなければならない状況がストレスになる犬は多くいます。

インターホンの音を知らない人がテリトリー内に入ってくる合図音として捉え、鳴るたびにストレスを感じている子もいます。

愛犬が何に対して警戒し、怯えているのか見極めたうえで、接する機会を減らせるのであれば極力減らします。配達や来客など日常において避けられないことであれば、ハウスに誘導する、犬の行動範囲を制限するなどして、「自分には関係のない、心配のないこと」と覚えさせるようにしましょう。

引っ越しや旅行など、いつもと違う環境におかれた

環境の変化も犬にとって好ましいものではなく、新しい環境に慣れるまでの不安と緊張がストレスになることもあります。

部屋の模様替えをしただけでもストレスに感じる子もいます。

愛犬のお気に入りのものをそばに置いてあげる、なるべく愛犬が安心できる場所を用意してあげる、などの工夫が必要です。
急に何もかも変えるのではなく段階を経て変えていけるものであれば、そのほうが望ましいです。

家庭内の嫌な雰囲気に気づいたとき

飼い主さんの機嫌が悪いときや、家族の誰かが喧嘩しているときなど、いやな雰囲気を感じとって、ストレスを抱える子もたくさんいます。

言葉はわからなくても犬は家族をよく観察しています。常に平常心でいるのは難しいものですが、愛犬の目の前ではなるべく穏やかな飼い主であり、家族でいたいものです。

苦手な音、聞きなれない音を聞いた

掃除機やドライヤーなどの電化製品の音に恐怖を感じ、苦手としている子も多いです。

状況を理解できない分、花火や雷などの大きな音を苦手とする子も多く、花火音や雷が鳴り響いている間ずっと恐怖とストレスを感じているというケースもあります。

愛犬の注意を苦手な音からそらす工夫が必要です。愛犬の名前を呼んだり、おやつをあげたり、一緒に遊ぶことで気がまぎれるようならそうしてあげましょう。それどころでないようであれば、愛犬が隠れられるクレートなどを用意してやり、そっと見守ります。

愛犬が怖がっているからと、なでたり、抱きしめたりするのはおすすめしません。愛犬を必要以上に不安にさせないためにも、飼い主はいつもと同じ態度でいることが重要です。

また、苦手な音を小さな音で短時間聞かせ、徐々に慣れさせるというトレーニング方法もあります。

苦手なお手入れをされる

シャンプー、爪切り、歯磨きなどを、いつまでも慣れずに怖がる子は多いものです。
日々のブラッシングさえ、顔まわりはしっぽを触られることを嫌がり、逃げていく子もいます。

お手入れができないと、飼い主も疲れてしまいますが、「いつまでに慣らさなくてはいけない」と焦らず、愛犬のペースで徐々に慣らしていくようにしましょう。スキンシップを増やすことからはじめて、徐々に触られたくないところに触れ、されたくないお手入れへと移行します。

お手入れ時間を短くしたり、お手入れに使用するアイテムを(犬に恐怖心を与えない)小さいものにしたりといった工夫が必要です。

苦手な状況におかれる

診療を嫌がる犬は多いものですが、苦手なものや状況は犬によっても違います。
留守番を苦手とする犬は、留守番のたびに不安や恐怖を感じ、ストレスをためこんでしまいます。
車酔いをしたり、車を怖がったりする犬は、乗車する際に極度の緊張状態になります。

トリミングサロンが苦手な子もいれば、特定の人をなぜか苦手とする子もいるようです。

飼い主がそばにいて声をかけてあげ、その状況が悪いものではないことを徐々に覚えさせていく必要があります。すぐに克服することは難しいかもしれませんが、ご褒美をうまく利用して慣らしていきましょう。

飼育環境を不快に感じている

食事・水置き場所やベッド、トイレシーツなどが汚れていることがストレスになる子も少なくありません。足が汚れるのを嫌う子も多いようです。

寝床とトイレが近いことや、食事皿が低い、床が滑って歩きにくいなど、日々の小さな違和感や不快感が積もり積もって大きなストレスとなることもあります。

ほかにも、ケージの設置場所に日が当たりすぎる、寒すぎる、寝るときにうるさすぎる、明るすぎるなど、ちょっとしたことでも自分では状況を変えられない犬たちにとっては大問題となることがあります。

生理的欲求が満たされていない

空腹や喉の渇き、トイレしたいのを我慢しているなど、生理的な欲求が満たされないことからストレスをため込んでしまうケースも多くあります。

お散歩中のにおい嗅ぎをゆっくり楽しめていないなど犬らしい行動の制限もストレスになります。運動不足、日光浴不足なども欲求不満につながります。

まず愛犬をよく観察し、何が気になっているかを見極めなくてはなりません。そのうえで、愛犬が少しでも快適に過ごせるよう、環境を整えてあげてください。

コミュニケーション不足やスキンシップ不足

留守番時間が長い、コミュニケーション不足やスキンシップ不足などで常日頃孤独を感じているというケースでは、愛犬に深刻なダメージを与えることもあります。心理的な原因による慢性的な不安から、無駄吠えやいたずら、自傷行為や攻撃性などといった問題行動へと発展してしまうことがあるのです。

犬は感情を持つ賢い動物です。不安や孤独を感じとり、満たされなければ無力になり、自信を喪失してしまうこともあります。
「愛犬にストレスサインを認めたが、とくに思い当たることがない」という人は、日々の愛犬とのかかわり方を見直してみましょう。

ともに過ごす時間は足りているか、楽しく遊ばせてあげられているか、愛情をもって接してあげられているかを振り返り、改善できる部分はないか考えてみてください。
多くの犬がストレスに感じる代表的な例をご紹介しましたが、ストレスを感じる対象や感じ方、ストレスサインは犬によって異なります。

たとえば、雷を全然気にしない子もいれば、パニックになるほど怖がる子もいます。また、もともと人懐こい子もいれば人見知りの子もいるのです。

ほかの犬が喜ぶことでも愛犬にはストレスかもしれず、またその反対もあり得ます。愛犬はどのようなことが苦手でストレスになるのか、愛犬の性格と様子をしっかり観察し見極める必要があるのです。

愛犬をストレスフリーにする方法

喜んでいる犬
愛犬の性格を知り、苦手なものや怖いもの、ストレスの原因となっているものを突き止められたら、すべきことが見えてきます。

快適に過ごせる環境を整えよう

愛犬が一日の多くを過ごすハウスやベッド、お気に入りの場所は、衛生面に配慮し、安全で快適に過ごせるようにしましょう。
日当たりや風通し、室温もチェックします。

適度なコミュニケーションをとろう

コミュニケーション不足はさまざまな問題を起こします。意識して愛犬との時間をつくりましょう。
構いすぎも良くありません。愛犬の気持ちとタイミングを考え、適度におこなうのがポイントです。

少しずつ外部の刺激に慣れさせよう

知らない人や犬、見慣れないもの、聞きなれない音などはストレスそのものです。
犬の社会化期に経験をさせ、慣れさせるのが一番ですが、その後でも不可能ではありません。

愛犬の好き嫌い、得意不得意を理解し、少しずつ知らないものや刺激に慣れてもらいましょう。
決して無理強いはせず、時間をかけても難しそうであれば、慣れてもらうのではなく回避する方法もあります。

年齢、体調に応じた食事量と運動量を見極めよう

運動不足、睡眠不足、水分不足や栄養不足は、強いストレスがかかるだけでなく、健康面にも悪影響をもたらします。

食事量や運動量はその時々の愛犬に合った量を見極めなくてはなりません。年齢はもちろん体調、状況に合わせて、食事量や内容、散歩時間やコースの見直しをすることが大切です。日々愛犬を観察し、コンディションに気を配りましょう。

飼い主が穏やかに暮らすことを心がけよう

ケンカなど家族内の険悪なムードや大声、飼い主さんのイライラは、犬に不安を与えます。
愛犬と一緒の空間では、普段から穏やかな気持ちでいるように心がけましょう。

まとめ

飼い主と握手する犬
愛犬に100%ストレスフリーな生活をさせてあげられるかというと、それは難しいかもしれません。

それでも、犬と飼い主さんどちらもが幸せに心地よく過ごすためにできることはたくさんあります。
イライラしたとき、声を荒らげてしまったときは愛犬のことを考えてみてください。
怯えているか、心配してこちらを見ているに違いありません。

犬はパートナーであり、家族です。安心安全な暮らしを提供できるよう心がけ、飼い主さん自身も愛犬との暮らしを楽しみましょう。