犬の平熱は約37.5~39℃

成犬の体温

健康な成犬の体温は、平均的に37.5~39℃

犬種や毛量によって傾向は異なり、ダブルコートや長毛種の犬、日ごろから運動量の多い犬の体温は高めです。
小型犬は高め、大型犬は低めの傾向があります。

また、食事や散歩のあとは、健康な成犬でも体温が高くなります。

子犬の体温

食欲旺盛で新陳代謝が活発な子犬は、成犬よりも体温が高くなります。

元気で食欲があり、活発に動いている場合は38℃以上の体温でも心配はいりませんが、39.5℃を超えてぐったりと休んでいることが多いときは、急いで動物病院に連れて行きましょう。

老犬の体温

運動量や食事量が低下している高齢犬の場合は、新陳代謝も悪くなっているため、成犬と比べると体温はやや低くなります。

ただし、体温が37℃以下の場合は危険です。様子を見ているうちに意識がもうろうとし、震えが表れることもあるので、すぐに動物病院で受診しましょう。

犬の体温の測り方

犬の体温はいつ測る?

犬の1日の体温の変化は、人間と同様に起床時がもっとも低く、夕方16時から18時ごろにかけてもっとも高くなります。
体温測定はいつおこなっても大丈夫ですが、平熱を知るためには、測定する時間帯を一定にしておくのが望ましいです。

また、食後や運動後、寒い屋外から帰ってきてすぐに測定すると、平熱と異なる結果が出やすいため、避けたほうがよいでしょう。

用意するもの

ペット用の体温計

ペット用の体温計は先端を曲げられるほどやわらかい素材でできているため、肛門や腸を傷つけにくくなっています。

このような、体に直に接触させて体温を測る接触型のほかに、皮膚に近づけて熱を検出する非接触型があります。
非接触型は、耳の中など皮膚が露出している部分に近づけて体温を測ります。

体温計のカバー

接触型の体温計を使用する場合、衛生面を考慮し、使い捨ての体温計カバーを使用しましょう。
体温計カバーはポリエチレンなどの薄くやわらかい素材で、体温計の先端から差し込んで装着します。

食用オイル(オリーブオイルなど)

体温計カバーには、オリーブオイルなどの食用オイルを塗っておきましょう。食用オイルがない場合は、ワセリンでも大丈夫です。

油分の潤滑力で直腸内にスムーズに挿入できるようになります。

犬の体温は直腸温を測る

  • ステップ1.犬を落ち着かせる
犬が動き回っていたり、興奮していたりする状態では正確な検温ができないばかりでなく、肛門や直腸を傷つけてしまう危険があります。
測定の前にはフセをさせたり、背中をゆっくりとなでたりして、犬を落ち着かせましょう。

  • ステップ2.体をやさしく保定してしっぽを持ち上げる
犬が落ち着いたら、静かにやさしく、犬の体を保定します。
動き回らないようにと過剰に力を入れず、犬を不安がらせないようにしてしっぽを持ち上げます。

  • ステップ3.体温計を肛門から2cm程度のところまで水平に差し込んで測る
体温計を肛門から差し込みます。深さは2cmくらいのところまでで十分です。
水平に差し込まないと、直腸の壁に先端が当たり、ケガをさせることもありますので、注意してください。

難しい場合は

直腸での体温測定が難しい場合、無理をせずに次のような方法で体温を測りましょう。

ももの内側で計測する

人がわきの下で体温測定するように、犬の太ももの付け根に体温計をはさんで測ります。

耳で測る

非接触型の体温計を利用します。ペット用でも、人用のものでも使えます。
犬の内耳にはほとんど毛が生えていないため、体温計の感知部分を犬の耳の内側に向け、測定します。

太ももの内側や耳での計測は、直腸温に比べて約1℃低い体温となりますが、毎回同じ場所で継続して測ることで、愛犬の平熱や体調の変化を知ることができます。

ただし、体調不良が疑われるときなど、正確な体温測定が必要な際には、動物病院で体温を測ってもらいましょう。

体温は毎日測らなくてもOK

高野 航平

健康面でとくに気になることがないときは、毎日測定する必要はありません。
しかし、体調不調が疑われるときに、愛犬の体温が平熱と比べて高いのか低いのか判断できることは大事です。
愛犬の体がやや熱いと感じる、食欲不振がある、よく寝ていて元気がないときには、体温を測定するようにしましょう。

犬の体温が高い原因

タイミング、時間帯によるもの

散歩から帰宅したあとなど運動直後は、体温が高くなります。

また、朝よりも夕方のほうが、体温が高くなる傾向があります。
こうしたタイミングで測定し体温が高かった場合は、犬を落ち着かせてから改めて計測し直します。
再度の測定で平熱に戻っていれば、心配はいりません。

病気によるもの

犬の体温が高いとき、原因として病気による発熱の可能性もあります。
発熱を伴う病気には、以下のようなものがあります。

熱中症

夏に多く発生する熱中症は、過酷な暑さを主因として体温調節機能が働かなくなり、さまざまな体の不調が表れる病気です。

感染症

細菌やウイルスに感染し、体内の防御機能が高まることで発熱が起こります。
原因として、ケンネルコフなどのウイルス性感染症、外傷や口腔内から感染する細菌性感染症などがあります。

その他の病気

がんなどの悪性腫瘍による炎症や、すい炎、肝炎、子宮蓄膿症など体内で炎症が起きているとき、食中毒になったときも、体温が上がります。

犬の体温が低い原因

朝起きてすぐ

一日でもっとも活動量が少ないのは、睡眠中。

睡眠中の体の中では、生命活動を維持するために必要な最低限のエネルギーしか消費していません。
そのため、一日のなかでもっとも体温が低いのも起床直後となります。

寒さ

防寒が不十分な状態で寒い場所に長時間いると、環境に体温を奪われてしまい、低体温になります。

とくに寒さの厳しい環境では、毛が密集して生えているダブルコートの犬種でも平熱を維持できなくなることが少なくありません。

運動不足

筋肉は運動でエネルギー消費することによって熱を生み出し、体温を高めます。

日ごろから運動不足の生活をしていると、筋肉量が落ちてしまうため、体温が低くなってしまいます。

また、運動量に見合う量の食事を取っていないと、エネルギー不足により低体温になる場合もあります。

病気

甲状腺機能低下症や副腎機能低下症など、内分泌疾患により体温調節機能が弱まり、低体温になることがあります。
また、貧血やその原因になる肝臓疾患、腎臓疾患などにより、体温が低くなることもあります。

こんなときはすぐに動物病院へ

以下のような症状があるときは、様子を見ずにすぐに動物病院へ連れて行ってください。

発熱が続く

発熱のなかには、熱中症のように短時間のうちに命に関わる状態に陥る病気もあります。

体温が40℃以上ある

人間よりも平熱が高い犬でも、40℃以上あれば発熱しています。
感染症や熱中症など、処置を急ぐ疾患の可能性もあります。

体温が37℃以下のとき

人間では微熱程度の37℃ですが、犬にとっては低体温となり、危険な状態です。低体温の状態では、自律神経が乱れていたり、重大な病気が隠れていたりすることがあります。

下痢や嘔吐を伴っている

下痢や嘔吐などの消化器症状を伴う場合、感染症や食中毒、腎不全や肝不全などの内臓疾患の可能性があります。

陰部から膿が出ている(メスの場合)

不妊手術をしていないメスの場合、陰部から膿のようなおりものが出ていて、発熱を伴うときは子宮蓄膿症の可能性があります。

ぐったりしている

発熱が続いて体力を消耗している場合、治療が遅れると命に関わる可能性が高まります。

歯ぐきが白く、ガタガタ震えている

歯ぐきの色が白っぽくなり、全身でガタガタと震えている場合は、貧血が原因で低体温症に陥っている可能性があります。

呼吸が荒い

運動中や運動直後ではないにも関わらず、呼吸が荒い場合、貧血などが原因で低酸素状態に陥っている可能性があります。

食べない

食欲がなく、丸一日以上ほとんど何も食べず、体を丸めて休んでいる場合、栄養失調から低体温症状を起こしていることがあります。

病院に行くか迷ったら

高野 航平

基本的に一度の測定で高熱がみられた場合、数時間おいて再度測定してから受診を検討してもよいですが、重症化を防ぐためにも高熱が確認できた時点ですぐに受診することをおすすめします。

獣医師に聞いた! 犬の体温に関するQ&A

犬の体温が高い(低い)。なにか家でできる対処法はある?
前提として、愛犬の体温が高い・低いときは動物病院で受診しましょう。

診察前に応急処置をする場合は、熱中症などが疑われる発熱は「涼しい場所に移動させる」「体を冷やす」「水分を摂取させる」などが有効です。低体温時は、まずは体を温めることが大切です。
人間用の体温計でも大丈夫?
人間用の体温計は、動物用に開発されたものではありません。そのため、構造上などの問題で不向き・正しい測定値がわからなくなることがあります。
人間用の体温計を使用することも可能ではありますが、愛犬の体温を正確に測るにはおすすめはできません。
体温計がなくても体温を測る方法はある?
体温が高い場合、愛犬の体に触って「なんとなく熱いかな……」とわかることがあります。また、呼吸が荒い、涼しいところに好んで行こうとするなどの様子がみられることもあります。

体温が低い場合には、震えているなどの様子がみられることが多いです。

愛犬の異変に気付くためにも、日ごろから愛犬に様子を観察し、よく触る、抱っこするなどのコミュニケーションを取るといいでしょう。

獣医師からのメッセージ

愛犬の平熱をある程度把握しておくことは、体調管理の一環として大切なことです。

犬の負担を減らすため、とくに健康面で気になることがないときには毎日の測定は必要ありません。

しかし、体調不良が疑われるときには測定できるよう、準備をしておくことがおすすめです。また、自宅で測定することが難しい場合には無理せず、動物病院で測定してもらうようにしましょう。

まとめ

犬の体温は人より高いこと、それゆえに発熱や低体温に気付きにくいことを、ここまでお伝えしました。
そして、発熱や低体温のかげには、対応が遅れると命に関わるほど重大な病気が隠れていることもあります。
だからこそ、愛犬の定期的な体温計測は、健康管理のために大いに役立つもの。
体温を測るコツをつかむまでは難しく感じるかもしれませんが、様子を見ながら、愛犬の体温チェックをはじめてみてくださいね。