犬へのマイクロチップ装着 法律はどう変わる?

マイクロチップを装着した犬

何のための法改正?

迷子や災害などで、愛犬とはぐれてしまったとき、保護された犬の身元がわかるようにするのが、マイクロチップ装着の最大の目的です。遺棄や盗難などを防ぐ目的もあります。

「装着」の義務は販売業者が負います

犬・猫へのマイクロチップ装着が義務づけられるのは、ブリーダーやペットショップなどの販売業者です。

販売業者は犬を取得した日から30日以内に、取得した犬が生後90日以内であれば、生後90日を経過した日から30日以内に装着しなければなりません。

つまり、2022年6月1日以降に生まれた子犬には、原則としてマイクロチップが必ず装着されていることになります。

装着するマイクロチップは、環境省の基準に適合するもので、販売業者名、犬の性別、犬種、毛色などの情報を登録します。

飼い主に義務付けられるのは、飼い主情報の「登録」

  • 飼い主には、マイクロチップに名前、電話番号などの個人情報を登録することが義務付けられます。
  • 飼い始めてから30日以内に登録します。

※登録先は、指定登録機関のデータベースとなります。

すでに飼っている人は「努力義務」

すでに飼っている人や保護団体などの場合は、マイクロチップの装着と情報登録が努力義務となります。

飼い主として知っておきたいこと

抱っこされている子犬

【お迎え時】お迎え先でマイクロチップ登録の資料をもらう

お迎えの際は、販売業者(ブリーダー・ペットショップなど)がマイクロチップ装着の際に受け取った「登録申請書」の飼い主控え、または「データ登録完了の通知書」を譲り受けます。

法律施行後は、環境大臣が指定した指定登録機関に登録の申請を行うことになります。指定登録機関には、日本獣医師会が指定されます。

【お迎え後】飼い主情報を更新しましょう

マイクロチップには、「世界で唯一の15桁の数字 (ISO規格の個体識別番号)」が記録されているだけで、そのほかの個人情報は機関に登録することになります。
環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」
犬を迎えたら、装着されているマイクロチップに新しい所有者として、飼い主自身の情報を登録します。

マイクロチップが装着されていても更新や登録をしなければ、犬の所有者はいつまでもお迎え先の販売業者のままであったり、情報がからっぽだったりと、正しく身元確認ができません。

迷子になったときに、マイクロチップに紐づく情報が入っていなければ、愛犬を取り戻すことが難しくなってしまいます。

更新方法

更新時には、販売業者(ブリーダー・ペットショップなど)から犬を譲り受ける際に一緒に受け取る「登録申請書」、または「データ登録完了通知書」などの書類が必要になります。

そのような書類がない場合は、動物病院などの事務窓口で前の所有者に連絡を取り、所有者変更の意思を確認してもらう必要がでてきます。

この前所有者への確認手続きは、ペットの盗難などのケースにおいて、元の飼い主情報を削除してしまうなどの悪意ある情報更新を防ぐことに役立ちます。

名前、住所、電話番号など新しい飼い主として情報を更新すると、認識番号と紐づけられ、指定登録機関である公益社団法人日本獣医師会のデータベースに登録されます。

更新方法には書類申請とオンライン申請の2種類があり、それぞれの登録料は書類申請が1,000円、オンライン申請が300円です。

飼い主情報が変わるときには

登録した飼い主情報が変わるときには、指定登録機関に届け出をする必要があります。

・飼い主の名義、住所、電話番号等が変わったとき
姓が変わったり、住所や電話番号が変わった際も届け出が必要です。こちらの手続きには手数料はかかりません。

・譲渡するとき
ペットを新しい飼い主に譲り渡す場合には、登録証明書あるいは更新時に届く完了通知書を新しい飼い主に渡す必要があります。新しい飼い主が変更登録を完了すると、新しい登録証明書が発行され、前の登録証明書は無効になります。

・ペットが死亡したとき
ペット亡くなったら、死亡の届け出をする必要があります。

マイクロチップ 装着のメリット

子犬と遊ぶ男の子

保護されたときに身元の確認ができる

警察や動物病院、保健所などでは、犬を保護した際にはリーダー(読み取り機)でマイクロチップの装着有無を調べます。

迷子や震災などでペットとはぐれてしまっても、保護されれば身元が分かり、飼い主に連絡が来るというのが最大のメリットといえるでしょう。

GPSと同様に捉えられることがありますが、マイクロチップにGPS機能はついていません。
飼い主を特定できるのは、あくまで保護された場合ということになります。

盗難の際の身分証明

愛犬が盗難にあい、首輪や鑑札が外されても、マイクロチップで飼い主であることを証明できます。

マイクロチップってどんなもの?

マイクロチップ
犬の体に埋め込むマイクロチップは、いったいどのようなもので、どのように装着するのでしょうか。詳しく解説します。

サイズ

大きさは直径約2mm、長さ8~12mmほどで、カプセルのような円筒の形をしています。
カプセル状のチップは、通常より太い注射針のついた、「インジェクター」と呼ばれる注射器を使って注入します。
マイクロチップ
▲環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」
(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html#Q6)

中には何が入っている? 素材は?

内部はIC(集積回路)、コンデンサ、電極コイルからなり、外側は生体適合ガラスで覆われています。

チップにはそれぞれ15桁の数字が記録されていて、この番号を専用のリーダーで読み取る仕組みになっています。番号読み取りにはリーダーから発信される電波を利用するため、マイクロチップ側の電池は不要で、半永久的に使用できます。

埋め込む場所・装着方法

埋め込む場所は、犬の首の後ろの皮膚下です。
注射針の付いた専用インジェクターで体内に注入するのですが、これは獣医師だけがおこなうことのできる獣医療行為です。2022年5月31日以前から犬を飼っていて、新たにマイクロチップを装着したいと考えた場合、装着は獣医師にお願いする必要があります。

痛みは普通の注射と同じくらいといわれています。
大きな痛みや負担がないため、哺乳類をはじめ鳥類、爬虫類、カエルなどの両生類や魚類など、ほとんどの動物に使用できるとされています。また、基本的には鎮痛剤や麻酔を使用せずにおこなわれます。

愛犬にマイクロチップを装着することに不安や抵抗がある場合は、かかりつけの獣医師に相談してみるとよいでしょう。
動物病院の方針によっても異なりますが、局所麻酔をおこなったり、避妊・去勢手術のときに一緒におこなったりするケースもあります。

費用目安

病院によって異なりますが、装着費用目安は3,000~10,000円です。
これとは別に情報更新・登録にオンラインで300円、書類申請で1,000円が必要となります。
すでに装着されている場合は、購入時の生体価格に含まれていることも多いです。

生後いつ頃から装着が可能か

犬は生後2週齢、猫は生後4週齢から装着が可能と言われています。
日本獣医師会 マイクロチップを用いた動物の個体識別

健康被害はある?

日本獣医師会によると、日本国内では、副作用、ショック症状、体内での故障や破損など、現時点で事故や健康被害の報告は確認されていないようです。

レントゲンやCTスキャン検査にも支障はないとされています。ただし、埋め込み場所が頸部に近いことから、頸部のMRI撮影に関しては、画像診断の邪魔になると指摘する声もあります。

なぜ義務化された? マイクロチップの目的

女の子とシベリアンハスキー

マイクロチップ義務化の経緯

マイクロチップ装着義務化が法律に登場したのは、2004年「犬等の輸出入検疫規則」の改正のときです。

この改正により、日本に輸入する動物へのマイクロチップ装着が義務付けられました。
翌2005年には、アライグマなどの特定外来生物と、トラやクマなど特定危険動物への装着も義務化されます。

その後、2012年の「動物愛護管理法」改正の際に、5年後の見直し条項のひとつとしてペットへの装着義務が盛り込まれました。
そして2019年の法改正で義務化が決定、2022年6月1日に施行となりました。

マイクロチップ装着義務化のねらい

迷子や飼育放棄などで保護される犬たちは、一定の期間内に持ち主があらわれなければ殺処分の対象となってしまいます。

マイクロチップ装着義務化の目的のひとつは、保護された犬の身分確認がスムーズにおこなえるようになること、同時に、飼い主への返還率を高め、殺処分数を減らすためでもあります。遺棄や盗難などのペットに関する犯罪を防ぐ目的もあります。

まとめ

獣医師に抱かれる子犬
マイクロチップ装着は、迷子や、災害、盗難、事故などにより、飼い主と離ればなれになってしまった、愛犬を飼い主のもとへと戻すために、必要な措置です。

いざというときに、飼い主と愛犬とをつなぐ役割を果たすものですので、きちんと装着確認(または装着)・登録をおこないましょう。
【訂正とお詫び】
2022年2月18日に環境省が発表した「マイクロチップの装着等の義務化に係る法制度の概要」を基に、以下に内容を訂正しています。
情報訂正により、ご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。

✕訂正前
「2022年6月1日以降にお迎えした子犬には、原則としてマイクロチップが必ず装着されていることになります」

〇訂正後
2022年6月1日以降に生まれた子犬には、原則としてマイクロチップが必ず装着されていることになります。

記事訂正日:2022年3月31日

ブリーダーやペットショップなどが、2022年6月1日の法施行日に、現に所有している犬・猫に対しては、マイクロチップ装着を義務付けておりません。

したがってマイクロチップ装着義務は、2022年6月1日以降に生まれた犬・猫に関しては、ブリーダーなどの繁殖業者に対して発生します。
それ以前に生まれた犬・猫においては、ペットショップなどの中間販売業者が、施行日の2022年6月1日以降に取得した場合にのみ、中間業者に対して義務が生じます。
マイクロチップの装着等の義務化に係る法制度の概要