ペットのための防災対策3つ

もしものときのために、ペットにとっても安全な環境を整えます。
災害は飼い主さんの外出中に起こるかもしれません。さまざまなパターンをシミュレーションし、日頃より意識して防災対策をおこないましょう。

1.住環境の安全対策

家具は転倒防止措置をしているか、落ちてきそうなものはないか、確認しましょう。
ケージやペットのお気に入りの場所などは、なにも落ちてこない安全なスペースとしなければなりません。

2.いざというときに役立つペットのしつけと慣らし

猫や小型~中型犬などは、移動中や避難先で過ごす際など被災時にはクレートやキャリーに入っていてもらう必要性が出てきます。
いざというときのために、クレートやキャリーに慣れさせておきましょう。

大地震や津波など、広範囲にわたる被害が予想される場合は、リードを引いて犬を歩かせることすら危険が伴うかもしれません。

歩いて移動する可能性が高い中型~大型犬は、靴に慣れさせておくとよいでしょう。

高齢であるなどして歩行が難しい中型~大型犬は、リュックタイプのバッグや抱っこひもで移動させることになるはずです。
大型犬専用サイズのものもたくさん出ていますので試してみましょう。

3.ペットの行方不明対策

(1)避妊/去勢手術

大きな災害のあとには、避難途中ではぐれたペットや被災地に取り残されるペットが出てきます。
その際、発情期のメスのにおいを追いかけて行方不明になったり、妊娠して帰ってきたりするペットも珍しくありません。

無事一緒に避難できても、発情期やマーキングの心配がないほうが避難生活もスムーズです。
ペットへの避妊/去勢は、防災対策の面からみても飼い主の責任としておこなうべきものといえるでしょう。

(2)鑑札と狂犬病予防注射済票の装着

犬の場合、畜犬登録をした際に発行される鑑札と、毎年の狂犬病ワクチン接種後にもらえる予防注射済票は、装着が義務づけられています。

被災地にボランティアチームが入り、同行避難ができなかったペットや避難途中にはぐれてしまったペットたちの情報や頭数を調べ、捜索することがあります。

その際、手がかりとするのは保健所に登録された情報です。
登録がなければ、行方不明ペットの数に含まれることもありません。必ず登録をし、発行されたプレートを着けておきましょう。

(3)迷子札とマイクロチップを装着しよう

鑑札と一緒に、飼い主さんの電話番号を記した迷子札を着けておくとさらに安心です。
マイクロチップが装着されている場合は、最新情報が登録されているか確認しましょう。
全国の多くの動物病院でデータ(マイクロチップの中身)の登録や書き換えが可能です。

(4)ペットの写真を用意しておく

ペットの写真を用意しましょう。
飼い主が分かるよう、できれば飼い主とペットの2ショットのものが望ましいです。
また、なにかしらのトラブルで携帯電話が使えない状況になるかもしれません。写真は1枚だけでもプリントしておくことをおすすめします。

(5)ワクチン接種状況や既往歴の記録

現在服用させている薬があればその名前も一緒に記録しておきます。
写真と同じように、もしもの場合を想定し、デジタル(モバイルに保管)とアナログ(手書きのメモ)の両方で持っていると安心です。

(6)かかりつけの動物病院の連絡先

(5)と一緒に保管します。

備えておきたいペット用防災グッズ

災害発生時に慌てずに避難をするためには、災害時に必要となるグッズをあらかじめ用意し、まとめておく必要があります。人間用の防災用品をすでにまとめている人はそれに追加する形で、ペットの必需品を用意してあげましょう。

まずは、ペット用の「非常用持ち出し袋」を用意しましょう。

「非常用持ち出し袋」とは、避難時に家から持ち出す荷物のことです。リュックサックなどの持ち出しやすい形状の袋をすぐに取り出せる場所に配置しましょう。

人間用の防災用品を合わせると、膨大な量の荷物になってしまいそうですが、一度に運べる荷物は大人の女性で10㎏、男性で15kgまでといわれています。これは、自分の荷物とキャリー/クレートに入ったペットの重さも含めた数字です。

災害時は基本、徒歩で避難しなければなりません。荷物を持てる家族の人数、ペットの頭数や大きさにもよりますが、安全に速やかに非難するにはそれほどたくさんのものは持っていけないということです。安全性を優先し、本当に必要なものだけを厳選するようにしましょう。

ここからは、環境省がまとめたガイドラインに沿い、ペットのための防災用品をご紹介します。
人とペットの災害対策ガイドライン

ペット用の防災用品リスト

環境省のガイドラインでは、必要な防災用品として「なければ命にかかわる」【優先順位1】の非常用と、安全が確認できたら取りに帰る「避難生活が長期化した際に必要」な【優先順位2】の備蓄用とに分けて紹介しています。

まずは優先順位1の非常用からみていきましょう。

【優先順位1】避難時に必ず持っていきたいもの

療法食、薬

薬は普段からストック分もあわせ多めに処方してもらいましょう。
療法食を与えているならそれも多めにストックしておきます。

どちらも消費期限があるはずですので、日常の中で消費しながら備蓄していきます。
また、薬を飲ませる際に使っているシリンジやスポイト、補助食品など投薬グッズがあればそれらも忘れずに用意しましょう。

※シリンジ・・・針がついていない注射器のこと。液体の薬を与える際の補助具として使用できる。

クレートやケージ・キャリーバックなど

使い慣れたクレートやケージを持っていけば、避難所でもペットが落ち着いていられるでしょう。小型犬であれば、避難時もクレートやキャリーバックで運んだほうが安心です。

避難所に滞在することを考えると、少し大きめでたためるタイプのものがおすすめです。

フード、水

少なくとも5日分、できれば7日分以上あると安心です。

フードは普段食べているものを、小分けして保存しておくのもよいでしょう。
フードと水も、薬や療法食と同じように、古いものをためこまないようストック分は日常のなかで消費しながら備蓄します。

予備の首輪/ハーネスとリード

普段使用しているものと同じか、似ているものを準備しましょう。

リードは伸縮タイプではないものにします。
予備用にも迷子札を着けておくと安心です。

ここでいう器で優先されるべきものは水用です。

フード用は水用よりも即席や代用品を用意しやすいためです。
バッグの中のスペースや重さと相談しながら決めましょう。

器の代わりに、即席皿を作れる道具、ハサミやカッターをガムテープと一緒に入れておくのもよいでしょう。

ガムテープ

人用と共有でき、クレートの補強などさまざまなシーンで活躍します。

『ペットの行方不明対策』で紹介した(4)~(6)

ペットの写真、ワクチン接種記録や既往歴、動物病院連絡先。
これらすべてを一冊の手帳のようなものにまとめておきましょう。

バッグにつける札

飼い主とペットの名前、緊急連絡先、その他注意点(ペットの持病やアレルギー、噛みつくかもしれないから触らないでなど)を記入したものを、バッグの外に装着します。
油性ペンで書き、ビニールテープを貼るなどして防水にしておきましょう。

【優先順位2】一時避難後に取りに行きたいもの

  • ペットシーツ
  • 排泄物の処理用具
  • トイレ用品(猫の場合は使い慣れたトイレ砂)
  • タオル、ブラシ
  • おもちゃ
  • 洗濯ネット(猫の場合)


ペットシーツと排泄物の処理用品は、人用簡易トイレやオムツなど、本来以外のさまざまな用途でも活用できるすぐれもので、あると大変便利です。

【優先順位1】の荷物に余裕がある場合は、そちらに少量入れてもいいかもしれません。

災害が発生したら

避難の際の注意点

安全確保

被災の瞬間、守るのは自分自身の身です。直ちに安全を確保しましょう。
ペットと一緒に自宅で被災した場合も同じで、人命が最優先です。飼い主さんが助からなければペットを守れないからです。
たとえば地震の場合であれば、安全な場所に移動し、身を守りましょう。

揺れているあいだはペットを捕まえられなくてもあせらず、揺れがおさまってから探しに行きます。
興奮していて捕まえられない場合は背中から毛布をかぶせ包み込み、そのままケージに入れます。

情報収集と避難準備

地震の場合は室内のガラス飛散や倒壊した家具、電化製品に注意しましょう。危険な場合は靴を履きます。
中型~大型犬など歩かせて避難する場合は、ペットにも靴を履かせましょう。

<被災直後にとるべき行動>
1 電気ブレーカーとガスの元栓を切ります。
2 ラジオや携帯電話、テレビで情報収集します。
3 特別警報や土砂災害警報が出たらすぐ避難しましょう。


避難の際、犬の場合はリードをつけ、首輪/ハーネスに緩みがないか確かめます。
猫はキャリーバッグやケージに入れ、開かないようガムテープでしっかりと固定します。

避難中の注意点

避難所の場合

避難場所から避難所への移動が決まったら、状況詳細の確認をおこないましょう。
ペット可の避難所でも、人と同じ屋内スペースに入れるところはほぼありません。

具体的な状況を把握し、各避難所のルールに従います。
アレルギーやペットが苦手な人がいることを忘れてはいけません。

自宅の場合

自宅避難は、家屋の安全確認がとれてからになります。

自宅で避難生活を送れるならば、人にとってもペットにとってもなによりです。避難所で物資や情報を得ながら過ごしましょう。

車の場合

車中生活はペットと一緒に過ごすことができ、プライベートが確保され、燃料があるならエアコンや電機も使えるというメリットもあります。

熱中症やエコノミー症候群に十分注意して過ごしましょう。

ペット防災に対する取り組み

環境省のガイドラインを参考に、住んでいる地域の取り組みについて調べてみましょう。
災害、あなたは大丈夫? 人とペットの災害対策ガイドライン『一般飼い主編』

自治体ごとの取り組み

東日本大震災を契機に国の呼びかけで、ペット同行避難についての取り組みが各自治体でおこなわれています。

ペット対応については各自治体によって異なりますが、会議やシミュレーション、避難訓練を重ね、独自のマニュアルや情報を作成している自治体も多くあります。

さらに環境省は、「避難所でペットが過ごす場所を用意しているか」「ペットの受け入れ可/不可を公開しているか」などの項目を盛り込んだ点検リストを、各自治体へ通達することを決めました。

まだまだ地域ごとに差のあるペット同行避難ですが、今後少しずつ変化が見えてくるはずです。
居住地域の最新情報を把握できるよう定期的にチェックしましょう。

ペットに関する災害ボランティア活動

各自治体、県・市の獣医師会は、平常時から動物愛護推進委員や愛護団体、登録ボランティアと協力関係を築いておくよう求められています。

地域住民のためのイベントや交流会、セミナーを開催するなどし、適正飼育や防災の備えについての普及・啓発活動を、共同でおこなっています。

また、保健所(生活衛生課)や動物愛護センターに登録しているボランティアに声をかけ、災害時ボランティアを育成している自治体もあります。登録ボランティアたちは、活動を希望すると研修を受けることができ、災害時に召集されるメンバーとして認定されます。

ペット救護本部が設置されると、災害ボランティアに連絡が入り、県、市または獣医師チームの下に配属されるようになっています。

現地に入ったボランティアスタッフたちは飼い主対応、動物対応、迷子動物保護、施設清掃などに分かれ作業をします。避難生活が長引いた時のために預かりスタッフも募られます。
ペットとともに暮らしている人であればどこかでお世話になるかもしれません。
人とペットの災害ガイドライン『ボランティアの活動と規範』

まとめ

ペットの防災は、知識と心構えが重要です。
被災の瞬間はどこにいて、どのような状況のときなのか、そのときペットは一緒なのか……。

さまざまなパターンを想定し、家族や友人、ご近所のペット友だちとも話し合っておきましょう。
また、自治体や愛護団体が開催する防災訓練などのイベントには積極的に参加をして、地域住民との交流と知識の実践を心がけましょう。