犬にチョウダイを教える必要性

ロープを咥えている犬
犬は、人間と違って何かを確認するときに口を使います。子犬の時期は好奇心からいろいろなものを咥え、最悪の場合、飲み込んでしまうこともあります。
また、何かを引っ張ったり、持ち運んだりするときにも口を使います。愛犬と楽しく遊ぶためには、咥えたおもちゃを離すということを覚えさせるとよいでしょう。

人間と犬が安全かつ楽しく暮らすためには、ルールが必要です。咥えたものを強引に奪い取るのではなく、ルールとしてチョウダイを正しく理解させることはとても大切なことなのです。

誤飲などの危険回避に役立つ

犬が食べてはいけないものを咥えていると、「急いで取らなければ!」とついつい焦ってしまいがちです。しかし、そのような飼い主の行動は、犬にとっては逆効果に働く場合が多いです。取られまいと余計に口を閉ざしてしまったり、反射的に飲み込んでしまったりします。

「チョウダイ」の一言で口を開くことを普段から理解させておくと、犬が食べてはいけないものを口にしているときでも落ち着いて対処することができます

ポジティブな関係性を構築する

チョウダイは遊んでいるときにもよく使います。楽しくなって興奮していると、犬は咥えたおもちゃをなかなか離してくれません。そんなとき、飼い主がおもちゃを強引に奪い取ろうとすると興奮をあおってしまい、余計に離さなくなってしまうため注意が必要です。

チョウダイは、「おもちゃを奪い取られる」と思わせるネガティブな言葉ではなく、「離してもまた遊んでもらえる」というポジティブな言葉として理解させることが重要です。正しく理解させることで、ポジティブな関係性の構築につながります。

チョウダイの教え方

ボールを咥えている犬
チョウダイは遊びながら教えましょう。ロープや大きめのおもちゃなど、犬が咥えやすく、引っ張りっこができるものを用意すると教えやすいです。


【1】ご褒美のおやつをすぐに取り出せるよう、遊ぶ前にポケットやトリーツポーチなどに入れて隠し持っておきます。

【2】引っ張りっこで楽しく遊びます。犬は逃げる物を追いかける習性があるので、愛犬におもちゃを追わせるのが、引っ張りっこで夢中に遊ぶためのコツです。

【3】そろそろおもちゃを離させたいというタイミングで、おもちゃから手は離さずに引っ張るのをやめます。それと同時に、もう一方の手でおやつを握り、握った手を愛犬の鼻先に近づけます。その際、「チョウダイ」を言います

【4】愛犬がおもちゃを離したら、おもちゃを取り、握っていたおやつをあげて褒めます。

【5】犬がおやつを食べ終えたら、【2】に戻って再度遊んであげます。

おやつを出すタイミングと頻度を変化させていく

鈴木 知之

最初のうちは、チョウダイのコマンドと同時に、おやつを握った手を差し出しますが、ある程度慣れてきたら少しずつおやつを出すタイミングを遅らせます。そうすることで「おもちゃを離したら、その報酬としておやつがもらえる(いいことがある)」と学んでいきます。

そこまで学習が進んだら、おやつをあげる頻度を毎回ではなく、ランダムにしていきます。たまにもらえる状態にしていくことで、「次はもらえるかも」という期待感が生まれ、おもちゃを離すことへのポジティブな動機につながっていきますよ。

犬にチョウダイを教えるときの注意点

おもちゃで遊ぶチワワ

おもちゃを離させるときは手の動きを止める

チョウダイをさせるときは、引っ張りっこしていた手を止めるようにしましょう。この時おもちゃは手に持ったままで構いません。
犬は引っ張られたら、引っ張り返す習性があるため、飼い主の手の動きを止めたほうが離しやすくなります。

おもちゃを離したら再度遊んであげる

愛犬がおもちゃを離したあと、そこですぐに遊び終わらないようにしましょう。離したら終わりにすると「おもちゃを離すと楽しい遊びが終わってしまう」「離すとおもちゃが取り上げられる」と学習する可能性があります。
おもちゃを離しても、またちゃんと遊んでもらえることを理解できれば、素直に離すようになっていきます。

しつけのチョウダイと「ちょうだいポーズ」の違いは?

ちょうだいポーズをする犬
この2つは全くの別ものです。しつけのチョウダイは犬が口に咥えた物を離す行為ですが、ちょうだいポーズは、犬が座った状態で両前足をあげるものです。
愛犬が飼い主さんに何かを「ちょうだい!」とおねだりしているように見えることから、ちょうだいポーズといわれています。一般的には芸の一つに分類されます。

どちらも教える際の注意点

愛犬にしつけのチョウダイと、ちょうだいポーズの両方を教える場合、愛犬が混乱しないよう、それぞれ別々のコマンドを使うようにしましょう。

たとえば、咥えた物を離すコマンドとして「チョウダイ」を使っているのであれば、ちょうだいポーズには、「必死に頼む」「懇願する」という意味の「ベグ(beg)」や、「鎮座する」という言葉が由来の一つとされている「チンチン」を使うのが一般的です。

ちょうだいポーズの教え方

【1】まずは愛犬にオスワリをさせます。

【2】おやつを持った手を愛犬の顔の前から、ゆっくり真上に移動させます。

【3】おやつを持った手の動きを追いかけて、愛犬の前足が浮いたところでおやつを与えましょう

【4】おやつを与えるタイミングを遅らせ、前足を浮かせている時間を少しずつ伸ばします。

【5】ちょうだいのポーズが安定してできるようになってきたら、「ベグ(beg)」「チンチン」などのコマンドをつけて練習しましょう。

胴長短足だと体に負担がかかるので要注意

鈴木 知之

コーギーやダックスフンドなどの胴長体型の犬種は、腰への負担が大きいため、ちょうだいポーズを教えることは避けましょう。

ドッグトレーナーに聞いた! チョウダイのしつけ方に関するQ&A

ご褒美のおやつを使わずにチョウダイを教えたい。どうしたらいい?
少し根気のいる方法にはなりますが、おやつを使わずに「チョウダイ」を教えることは可能です。

おやつへの執着が強い子は、おやつがあるかどうかで行動を選択する傾向が強いです。そのため、「チョウダイ」のコマンドをなかなか覚えてくれず、おやつがあれば離すけれど、おやつがなければ離さないということがよくあります。

その可能性がある場合は、はじめからおやつを使わずに教えることも一つの手ですね。以下の方法で、焦らずじっくり取り組んでみてください。


【1】おやつを使用する場合と同様に、引っ張りっこで遊びます。

【2】離させたいタイミングで引っ張るのをやめてじっと待ちましょう(おもちゃは手に持ったままでOK)。つまらないと感じて、愛犬自ら離すのを待つことがねらいです。

【3】飼い主側が手を止めても、愛犬が引っ張るのをなかなかやめない場合は、おもちゃを持っている手とは反対の手で愛犬の首輪に指を引っかけて、後ろに下がれないようにしましょう

【4】愛犬が離したら褒めて、すぐにまた遊んであげます。

【5】何度か繰り返していくと、手の動きを止めたときにスムーズに離すようになります。その状態になってから「チョウダイ」のコマンドを使いましょう。

まとめ

フレンチブルドッグと飼い主
犬にとって咥えるという行為は、本能的で自然なものです。そのため、人間と一緒に生活するからといって、咥えること自体を否定してしまっては犬にとって大きなストレスになります。
咥えてよいものとダメなものの区別を教えることはもちろん、咥えたものを離すチョウダイも覚えさせることが大切です。誤飲などのトラブル回避にもつながります。なにより、遊ぶことを通して、愛犬とポジティブな関係を築くことができます。
犬の習性や心理を理解して、楽しみながら教えていきましょう。
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