犬のくしゃみの原因

掃除機
犬のくしゃみの原因は大きく分けて3つあります。

1.異物による刺激

ほこりなどの異物を吸い込み、いわゆる「鼻がむずむず」したときに出るくしゃみです。
ほこりのほかに砂や小さな虫、綿毛などが入り込み刺激となることもあります。

また、飲み水やごはんのカスなどが誤って鼻に入ったときにくしゃみをすることもあるでしょう。
香水のような人工的な強い香りや、タバコのにおいが、刺激となるケースも多いです。

2.アレルギー

花粉やハウスダストなどの、アレルギーによるくしゃみです。くしゃみのほかに、透明な鼻水が出ることも多いです。
アレルギーの場合は、くしゃみや鼻水以外に発疹や皮膚の荒れ、脱毛や赤みを伴う皮膚症状がみられることがあります。

3.病気

ウイルスや細菌、カビなどにより、風邪のような症状が出る感染症、口の中や鼻腔内にできた腫瘍が原因でくしゃみが出ている可能性が考えられます。

また、犬歯のぐらつきや、歯周病が原因となることもあります。
その場合は、くしゃみのほかに鼻水や鼻血なども出るのが特徴です。

犬のくしゃみから考えられる病気

犬 診察

ケンネルコフ

ケンネルコフとは、伝染性の呼吸器系疾患の総称で、「犬伝染性気管気管支炎」とも呼ばれています。
咳(コフ)が主な症状の伝染性の強い病気で、原因となる菌の種類も非常に多く、ジステンバーウイルス、パラインフルエンザ、犬アデノウイルス2型、気管支敗血病菌、犬ヘルペスウイルス、マイコプラズマなどの混合感染によって引き起こされます。

免疫力の低い生後6カ月未満の子犬や老犬に多くみられ、多頭飼育などの状況下の場合、1頭がかかればあっという間に広がります。

そのため、家族に迎えたばかりの子犬が、くしゃみや咳をしているというケースは珍しくありません。
受診すべきくしゃみかどうか、ほかの症状もあわせて、愛犬の様子をしっかり観察しましょう。

感染すると命に関わる可能性のあるジステンバーウイルスについては、混合ワクチン接種で予防と重症化を防ぐことが可能です。

鼻炎

鼻炎とは鼻の粘膜が炎症を起こしている状態です。
ウイルスや細菌、真菌などの感染が原因で炎症を起こすとくしゃみが出ます。くしゃみのほかには、粘り気のある鼻水がみられることもあります。

鼻腔内腫瘍

くしゃみと同時に血混じりの鼻水が出る場合は、鼻の中に腫瘍ができている可能性があります。
とくに中高齢の犬であれば、鼻腔内腫瘍である可能性は高くなりますので、くしゃみがなかなかすっきり治らない、鼻出血や鼻水が続くといった場合は、病院で診察を受けましょう。

歯周病

細菌の感染によって引き起こされる歯周病は、病気が進行することで、歯根部の感染が鼻腔内にも広がります。
とくに上顎の犬歯の根本と鼻腔は近くにあるため、犬歯に問題が生じれば鼻腔も炎症を起こし、ひどくなると鼻腔との間に穴が開いてしまいます。

そのため、ごはんや飲み水が鼻腔内に入り込んでしまい、それが刺激となってくしゃみや鼻血が出ることもあります。

こんな犬のくしゃみ、病院に行くべき?

犬 診察
愛犬がくしゃみをした場合どうするべきか、判断基準となる症状をあらためて考えてみましょう。

様子見してもいいくしゃみ

とくに問題のない、生理的現象と判断できるくしゃみの場合は様子見でOKです。
数回のくしゃみだけで、そのほかは普段の様子と変わらない場合は、心配のないものといえるでしょう。

病院に行くべきくしゃみ

獣医師に相談したほうがよいくしゃみは、なにかしらの病気の可能性があります。
たとえば
  • くしゃみが止まらず連発している
  • 1日に何度もくしゃみをする

このような場合は、生理的現象ではない場合があります。

くしゃみと一緒に鼻水が出ている、鼻水に色が付いている、鼻水の量が多い、鼻水に粘り気がある、膿が出る、鼻血が出るなどの場合は、風邪や感染症、鼻腔内の異常が考えられます。

食欲が落ちている、元気がない

くしゃみ以外に食欲不振などがみられる場合は、鼻づまりを起こしているのかもしれません。
犬も人と同様、鼻づまりがあると嗅覚が低下してしまい、食欲が落ちたり元気がなくなったりします。いつもと違う様子がみられたら動物病院に連れて行きましょう。

くしゃみは体調不良のサインかも

高野 航平

小さいワンちゃんですと、くしゃみが体調不良のはじまりのサインであることも。くしゃみの回数だけでなく、元気や食欲はあるかなどの様子もしっかり見てあげる必要があります。

何度も繰り返したり、鼻水などほかになにか変わった様子があれば、できるだけ早めに獣医師の診察を受けるようにしましょう。

犬の逆くしゃみとは

犬 くしゃみ
鼻や口から空気を出すのが「くしゃみ」ですが、その逆、息を吸い込んでしまうのが「逆くしゃみ」です。

何度も「ふがっ」「ブーブー」のように鼻をならしながら息を吸うため、「くしゃみ」からイメージできるものとは異なり、初めてみたときに「逆くしゃみ」だと認識するのは難しいかもしれません。
症状もくしゃみのように単発の動作ではなく、数秒~数十秒続きます。

この症状は、「鼻咽頭尾端部」と呼ばれる部位になにかしらの刺激が加わったことで引き起こされます。また、パグやフレンチブルドッグなどの短頭種に多くみられるといわれています。

愛犬が突然、連続的に息を吸い続けるため、どうしても苦しそうにみえて不安になるかもしれません。しかし、実際はそれほど苦しいものではなく、病的なものでもないので、治療の必要はないとされています。
あまりに頻度が高く、症状が長く出るようでしたら、一度獣医師に相談をしてみましょう。

獣医師に聞いた! 犬のくしゃみのQ&A

何度もくしゃみをしていたら、絶対病院に行かないとダメ? 自然に治ることはないの?
くしゃみの原因によります。ほこりが入ってしまったり、ごはんがむせたりしたことによるくしゃみですと、元気や食欲、排泄の様子に変化がなければおうちで様子をみてあげても大丈夫です。

ですが、何度もくしゃみが出る場合には、アレルギーや風邪などの体調不良や、もっとほかの病気が潜んでいることも。ただのくしゃみだと思って放置していたら、重大な問題が潜んでいたということにならないように、早めに病院で診察を受けるようにしましょう。
逆くしゃみが心配。本当に治療はいらない? なにか病気の可能性はない?
逆くしゃみは、勢いよく空気を吸い込む行動です。「鼻咽頭尾端部」という部分に刺激が加わることで起きる生理現象のため、死に至るような重大な病気に発展することは基本的にありません。

ただ、勢いよく空気が移動することで気道粘膜に刺激が加わり、まれに鼻出血を生じることがあります。多くは1分程度で治まりますが、逆くしゃみが続くことでワンちゃんの元気がなくなったり、食欲が落ちたりしているときには受診してあげるとよいでしょう。

ただ、逆くしゃみと思って放置していたら、実は咳で原因が心臓や気管にあった……ということもあります。気になるときは早めに受診するようにしてください。

動画を撮影しておいて、受診の際に確認してもらうのもよいですね。
多頭飼いで、高齢犬もいる。くしゃみの家庭内感染を防ぐ方法はないの?
ワンちゃんを多頭飼いしているときには、基本的に全頭混合ワクチンを接種しましょう。くしゃみといっても原因は多様ですが、万が一感染症であった場合、ほかのワンちゃんにも広がってしまう可能性があります。

可能であれば、おうちの中で過ごす部屋を分ける、食器は区別して使うたびにきれいに洗浄するなどの対策をとってあげるとよいですね。

高齢のワンちゃんですと、状況によってはワクチン接種を控えることもあります。そのため、新しくワンちゃんをお迎えするときは、きちんとワクチン接種をしてあげたうえでお迎えしてあげると安心です。

獣医師からのメッセージ

ワンちゃんも人間と同じようにくしゃみをします。数回で治まるようであれば、様子を見てあげてもよいでしょう。しかし、風邪のひきはじめでくしゃみが出ている可能性も。

とくに小さなワンちゃんの場合、まだ抵抗力が低いので、早めにきちんと治療してあげないとどんどん悪化してしまう危険性もあります。

また、風邪以外にもほかになにか問題が潜んでいることもあります。くしゃみが何日も続いていないか、鼻水は出ていないか、元気はあるかなどいつもと違った様子がないかをよく見ていただき、早めに受診するようにしましょう。

まとめ

犬 鼻
犬のくしゃみはそのほとんどが生理的現象であり、特別なことではありません。
しかし、鼻がなにかしらの刺激を受けた結果の症状であるということもできます。
くしゃみ以外の症状はないか愛犬の様子を確認し、受診基準と照らし合わせながら対処を考えましょう。
もし、愛犬が自分のくしゃみや逆くしゃみに驚いたり戸惑ったりしていれば、大丈夫だよと声をかけて安心させてあげましょう。