季節の変化による体調不良

体調不良の犬

内臓機能の低下

夏バテなど夏の暑さによる疲れが残ってしまったり、朝夕の寒暖差が大きくなったりすると、体温調節のためにはたらく自律神経が疲弊し、消化器官などの内臓が弱ります。

それにより、食欲不振や下痢などの症状が現れます。

椎間板ヘルニアなどの神経疾患や運動器疾患

寒さにより体がこわばり、椎間板ヘルニアや靭帯損傷などの運動器疾患が起こりやすくなります。

膀胱炎

暑い夏よりも飲水量が減る秋は、膀胱炎が起きやすくなります。
尿量や色の変化、においをこまめにチェックし、異常があれば早めに動物病院へ行きましょう。

呼吸器系の病気

朝夕の寒暖差や気温の低下から、呼吸器系に異常が出ることがあります。
暑くないのに呼吸が荒い、ゼーゼーというような音を出して呼吸をしている、咳やくしゃみが増えてきたなどの場合は、動物病院で診察を受けましょう。

秋ごろに犬に見られる体調変化

体調不良の犬

食欲増加

秋になり気温が下がってくると、夏の暑さのために弱っていた胃腸が回復し、食欲が増進する犬は少なくありません。だからといって、食欲にあわせてフードを与えると太ってしまいます。

愛犬の体重や年齢に合わせた適切な量を心がけ、たくさん食べる子は運動量も増やしてあげましょう。

抜け毛

多くの犬は年に2回、季節の変わり目に被毛が生え変わり、次の季節を過ごしやすい毛量や毛質になります。
毛の生え変わる時期を「換毛期」といいます。この時期はいつも以上に丁寧にブラッシングをおこない、抜けた毛を取り去ってあげましょう。

ブラッシングやシャンプーは、皮膚の代謝を高めて換毛を助けます。

睡眠時間の増加

寝苦しかった夏から涼しくなって、愛犬も眠りが深くなる季節です。
犬の平均的な睡眠時間は12~16時間といわれています。

寝姿の愛らしさに、つい触りたくなりますが、ぐっすり眠っている愛犬は静かに見守ってあげましょう。

肥満と抜け毛、毛玉に要注意

高野 航平

暑さの厳しい夏に落ちていた食欲も戻ってくる秋ですが、食欲のままごはんやおやつをあげてしまうと、体重が増えすぎて肥満になってしまったり、食べすぎでおなかを壊してしまったりすることもあります。

体重が増えすぎるようであれば少しご飯の量を控えめにするなど、ワンちゃんの体重や体調を見ながら食事量を調節してあげてください。

また、秋は換毛期でもあります。抜け毛をそのまま放置してしまうと、毛玉ができてしまったり、皮膚トラブルの原因になったりしてしまうため、ブラッシングやシャンプーなどのケアが大切です。

ただし、ブラシで強く擦りすぎてしまったり、シャンプーのし過ぎなどの不適切なケアはかえって皮膚炎を起こしてしまうこともあります。

ブラッシングの際は、ワンちゃんの毛質や長さに合ったブラシを使い、力を入れすぎないようにしましょう。シャンプーも、皮膚に異常のないワンちゃんであれば、3~4週間に1回程度でよいとされています。

秋の植物に注意

たくさんのキノコ

誤飲・誤食

銀杏

銀杏に含まれている「アミグダリン」や「メトキシピリドキシン」は、大量摂取により中毒になることがあります。

銀杏中毒になると、嘔吐やけいれん、発作、呼吸困難などの症状がおき、重症になると意識不明になり、最悪の場合、死に至ることも。

どれくらいの量なら大丈夫なのかといえば、年齢や体重、体調などにより許容範囲はさまざまで、超小型犬では1粒でも中毒になることがあります。

秋が深まるとイチョウの木の下に銀杏が落ちていることも多くなりますので、拾い食いをさせないように気を付けて歩きましょう。

なんでも口に入れたがる子犬や若犬は、銀杏の落ちている場所を避けて歩くか、抱き上げてしまいましょう。

キノコ

秋の高原や里山を愛犬と散歩するのは楽しいものですが、毒キノコの誤食には気を付けてあげないといけません。

食用キノコと毒キノコを見分けるのは難しく、毒のないキノコでも周囲の泥や汚れ、ほかの動物の汚物などをかぶっていることもありますので、十分に注意してください。

キク、カーネーション、ヒガンバナなどの花

秋に開花する種類の花は多くありますが、接触や摂取によって犬に健康被害をもたらすものも少なくありません。

鼻先でにおいをかごうとして接触しただけでも皮膚炎をおこすものや、誤食により中毒症状を現すものもあります。

においかぎは犬の楽しみでもありますが、飼い主はよく観察し、誤食をしないように気を付けてあげましょう。

カエル

夏から秋にかけて増えるカエル。散歩中にそのカエルを捕獲し、食べてしまう犬がいますが、大変危険です。
カエルには体内に猛毒をもつもの、治療が難しいマンソン裂頭条虫がいるものなどが多く、中毒になると取り返しのつかない場合もあります。

カエルを見つけてもじゃれついて遊んだり飲み込んだりしないよう、厳重に注意してあげてください。

アレルギー

この季節、人の場合でも「秋の花粉症」として、ブタクサやヨモギ、カナムグラなどのアレルギーを起こしやすい季節です。
また、ウルシ科の植物など接触するだけでアレルギーのような症状を起こすものもあります。

散歩中や帰宅後に、愛犬がかゆがる、くしゃみをするなどの様子を見せたら、動物病院でのアレルギー検査をおすすめします。花粉にアレルギーがあるとわかった場合は、服を着せて散歩をするのもよいでしょう。

また、花粉以外にも、カビやダニが原因となって起こるアレルギーもあります。
秋は長雨の季節でもありますので、室内の湿度に注意し、カーペットや愛犬の寝具類も清潔に保ってあげましょう。

そのほかの秋対策

紅葉している木

室温管理

犬の原産地国や被毛の質・量によりますが、多くの犬にとって快適な気温は22℃前後湿度は60%前後といわれています。

初秋の日中ではまだ気温が高く、秋が深まるにつれて20℃以下になる日も増えてきます。
季節の変わり目でも体調を崩さずに維持できるよう、愛犬の快適な気温や湿度を保てるように注意してあげましょう。

体温調節が苦手な子犬や老犬のためには、室温をやや高めの24℃前後に保っておくのがおすすめです。

寒さ対策

小型犬や短毛種は寒さに弱いため、晩秋から冬にかけての季節の変わり目は、寒さ対策が重要になります。

適切な室温設定とあわせて、ヒーターやホットカーペットを用意して、愛犬が寒さを感じたら利用できるように準備しておきたいものです。

また、散歩のときは衣類を着せてあげるなど、気温に合わせた保温を工夫してあげましょう。

獣医師に聞いた! 秋に注意した犬の体調についてのQ&A

秋になり、愛犬がごはんをたくさんほしがる。催促がすごいがどうしたらいい?
おねだりする姿もかわいくてついあげてしまいたくなりますが、おねだりするだけあげるのは肥満にもつながってしまうためNGです。

おねだりの多い場合には、一日にあげるご飯の量は変えずに、ご飯の回数を増やしてみましょう。空腹の時間が短くなり、おねだりが少なくなることもあります。

また、腹持ちのよいご飯に変えてみたり、時間をかけて楽しみながらご飯が食べられるように、知育トイを使ってみたりするのもよいでしょう。
愛犬が花粉症になった。散歩はできるだけ行かないほうがいい?
症状がひどい場合にはお散歩を控えてあげたほうがよいこともありますが、お散歩は、運動不足解消やストレス発散など、ワンちゃんにとっても大切なものです。

花粉症のワンちゃんのためには、花粉との接触をできる限り少なくしてあげることが重要です。
  • 花粉が多い時間帯のお散歩を控える
  • お散歩の際はお洋服を着せるなどしてなるべく体に花粉を付着させないようする
  • 帰宅後にシートなどで体を拭いたりブラッシングをしたりして、できるだけ体に付着した花粉を落とす
などの工夫をしてあげましょう。

また、アレルギーの症状がひどい場合には、抗ヒスタミン剤などのお薬を使用することも有効です。動物病院に相談してみましょう。

獣医師からのメッセージ

秋は、夏場に溜まった疲れや急な温度変化により体調を崩しやすい時期でもあります。とくにおなかの調子を崩してしまい、下痢や嘔吐などの消化器の症状が見られるワンちゃんは多いです。
温度などワンちゃんたちにとって過ごしやすい環境を整えてあげて、症状が続く場合には、早めに動物病院を受診しましょう。

また、暑さも弱まり、ワンちゃんとのお出かけもしやすい時期ですが、そのぶんケガや誤飲などの事故に遭いやすくなります。ワンちゃんとの時間を楽しく過ごせるよう、安全には注意してくださいね。

まとめ

笑顔の犬
厳しい夏の暑さからの疲れが出る季節、秋。
夏バテから回復して食欲が増大したのにおなかをこわしたり、朝晩の気温差が大きくなり体調を崩したりすることもあります。気温が下がってホッとしたあとは、次に来る冬の季節に向けて体調を整えていきましょう。

また、好奇心旺盛な子犬や若い犬には、落ちている木の実や道端の花などを食べないように、よく注意してあげてください。
愛犬と出かけるアウトドアも楽しいこの季節、体力を充実させて、健やかに過ごしたいですね。