チェックポイント1.目 

犬の目の健康チェック

チェック方法

犬は比較的、目の病気にかかりやすいといわれます。加齢が原因となることは多くありますが、若い犬でも発症することは少なくありません。

チワワやフレンチブルドッグのように目が大きく飛び出ている犬種は、眼球を傷つけやすい傾向があるため、注意が必要です。
また、トイプードルやマルチーズ、短頭種など涙やけを起こしやすいと言われる犬種は、日々、こまめなケアをしましょう。

目をチェックするときは、後ろのほうから犬の頭と首元を両手で挟むように固定し、目の周りの皮膚を両手の親指で軽く引っ張ります。
犬の正面から手を伸ばすと、犬が怖がってしまうことがあるので、声をかけながらやさしくおこないましょう。

次のような症状が見られないか確認します。

  • 目が濁っていないか
  • 充血していないか
  • 涙がいつもより多く出ていないか
  • 目ヤニが多く出ていないか
  • 目をショボショボさせていないか

心配なケース

黄色い目ヤニが多い場合や、白目の部分が充血している場合、明らかに目の表面がカピカピ乾燥していて目を気にしてこする様子が多くみられる場合は、角結膜炎、ドライアイの可能性があります。

触ると痛がる場合は、角膜潰瘍、緑内障であることも考えられます。
また、目の中が白く濁っているときは、核硬化症や白内障である可能性も。

動物病院を受診したときには、すでに病気が進行しているというケースも少なくありません。毎日チェックすることで、いち早く異変に気付くことができます。

チェックポイント2.耳 

犬の耳の健康チェック

チェック方法

日本のように、多湿な気候で暮らす犬は、耳に雑菌が繁殖しやすい傾向にあります。
そのため、犬の耳の健康を保つには、定期的なケアが必要です。月に1回ほど耳掃除をおこなうのが理想です。また、耳垢が多い犬の場合は、1~2週間に1回の耳掃除が望ましいです。

垂れ耳や耳毛の多い犬種は、耳のトラブルを起こしやすいため、こまめにチェックしてあげましょう。

犬の耳をめくって、次のような症状がないかチェックしてください。

  • 悪臭はないか
  • 耳垢は多くないか
  • 耳の皮膚に赤みはないか
  • 耳の中に傷はないか
  • 耳を頻繁に掻くしぐさを見せていないか

心配なケース

多少の耳垢やにおいであれば、生理的なものが多いので心配ないこともあります。
しかし、悪臭や耳垢の異常、皮膚の炎症は外耳炎など、耳の病気を発症していることもあります。
重症化すると、中耳炎・内耳炎を起こす恐れがあり、さらには神経症状にまで影響を及ぼすことも。

チェックポイント3.鼻

犬の鼻

チェック方法

健康な犬の鼻は、少し湿っているのが正常です。
鼻の乾燥が体の不調やトラブルのサインとして現れることもありますが、眠いときや睡眠中など生理的な現象であれば心配ありません。

犬の顔を両手で支えながら、正面と鼻の穴を見て、下記の点を確認しましょう。

  • 乾燥していないか
  • 鼻水・鼻血は出ていないか
  • 鼻の色が変化していないか

心配なケース

色や粘りのある鼻水は、感染性疾患や呼吸器疾患などさまざまな病気が考えられます。

また、健康な犬が鼻血を出すことは、ほとんどありません。
鼻水に血が混ざっているときは鼻炎など、一時的な炎症であることが多いですが、慢性的に続く場合は鼻腔内に腫瘍がある可能性も考えられます。

鼻の色については、加齢や気候によって薄くなる犬もいます。ただし、急激な色の変化は、内臓疾患が疑われることもあります。

チェックポイント4.口 

犬の歯の健康チェック

チェック方法

犬の口まわりは敏感な部分であるため、触られるのが苦手な子は少なくありません。
しかし、犬は歯周病になりやすい動物。歯周病はさまざまな病気を招くので、口まわりを触れることに慣れさせ、できるだけ毎日歯磨きをおこないましょう。
口臭が少なく、歯は歯石のない白色、歯茎はピンクか黒色が理想的。歯のぐらつきがないかも確認しましょう。

口をチェックするときは、片方の手で上顎を持ち、もう片方の手で下顎を持って口を開けます。下記の点を確認しましょう。

  • 口臭はないか
  • 歯石はないか
  • 歯茎が赤くなっていたり白くなっていたりしていないか
  • 歯のぐらつきがないか

心配なケース

歯茎の腫れや出血、歯のぐらつきが見られる場合は、歯周病の疑いがあります。
口臭が強いと感じるときは、歯周病に加え、内臓疾患の可能性も考えられます。

歯が茶色や黄色っぽく変色しているのは、歯垢や歯石が原因。多少の色素沈着は問題ありませんが、歯の根元に歯石が付着している場合は、動物病院での処置が必要です。

歯茎が赤くただれている場合は歯周病や歯肉炎、白っぽい場合は貧血を起こしている可能性があります。

チェックポイント5.皮膚・被毛 

犬のブラッシング

チェック方法

ブラッシングをおこないながら、皮膚や被毛の状態を確認します。
犬種にもよりますが、健康的な犬の皮膚は、白・ピンク・黒色が一般的です。

下記の点がないか、チェックしてみましょう。

  • フケや赤み、かさぶたはないか
  • 脱毛の症状はないか
  • 被毛にベタつきはないか
  • イボやしこりはないか
  • 発疹などのできものはないか

心配なケース

皮膚の色が紫色の場合は皮下出血、黄色っぽい場合は黄疸の可能性があります。

フケやかさぶたは、栄養の偏りや内分泌疾患が考えられますが、そこにかゆみが伴う場合は、感染症や寄生虫が原因であることも……。

皮膚が脂っぽくフケが多いときは、脂漏症という皮膚疾患を起こしている可能性もあります。
また、皮膚疾患は脱毛とも関係します。脱毛が見られる部位と、かゆみの有無を確認しましょう。

イボやしこりは良性の場合もありますが、悪性の腫瘍の可能性もあります。また、イボやホクロに見えるもののなかには、マダニの吸着である場合も。
無理に除去すると炎症を起こすこともあるので、獣医師に処置してもらうようにしましょう。

チェックポイント6.体 

肥満の犬

チェック方法

体全体を、優しく丁寧になでます。愛犬とのスキンシップにもなるので、できるだけ毎日おこないましょう。

愛犬の理想体型を把握できるものとして、「BCS(ボディコンディションスコア)」という指標があります。
BCSを参考に脂肪の付き具合、肋骨やくびれの見え方を確認してみてください。

BCSを踏まえたうえで、下記の点などがないか、チェックをしてみましょう。

  • 太りすぎていたり痩せすぎていないか
  • 急に体重が増えたり減ったりしていないか
  • 短期間でおなかが膨らんでいないか
参考文献
飼い主のためのペットフード・ガイドライン(P14)(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide_1808/pdf/full.pdf

心配なケース

おなかの膨らみが体重増加によるものであれば、食事や運動管理でダイエットをおこないます。
肥満も病気を招くことがあるので注意したいものですが、心配なのは、短期間で大きく膨らむケース。循環器や泌尿器の疾患が疑われます。

チェックポイント7.爪 

犬の爪

チェック方法

爪切りは月1回が目安です。自宅でおこなう自信がない場合は、動物病院やトリミングサロンにお願いしましょう。

チェックするときは、犬を自分の体に引き寄せて脇で抱え込み、足を持ち上げて確認します。犬の“伏せ”の姿勢、あるいは仰向けにさせてもよいでしょう。

下記の点などがないか、チェックしてみましょう。

  • 爪が伸びすぎていないか
  • 肉球や爪の間にゴミや異物が挟まっていないか
  • 足の裏をケガしていないか

犬が歩いてカチャカチャと音がする場合、爪が伸びている可能性があります。
また、見落としがちな狼爪(前脚の地面に接していない部分)も、よく見てあげましょう。

心配なケース

下記ような症状が見られるときは、自宅で処置をせず獣医師に適切な処置をしてもらってください。

  • 爪が伸びすぎて肉球に食い込んでいる
  • 爪の割れや折れ
  • 深爪による出血

チェックポイント8.おしり

犬のおしり

チェック方法

排泄や散歩のあとには、おしりの汚れを確認する習慣をつけましょう。
おしりをチェックする際、腫れや赤みの有無という見た目の確認も大切ですが、犬の行動もあわせて観察します。

  • おしりは汚れていないか
  • おしりに出血はないか
  • おしりに腫れや赤みはないか
  • おしりを気にしているようなそぶりはないか

おしり歩きするなど、犬がおしりをしきりに気にしているときは、肛門腺に分泌液がたまっている可能性があります。
この場合は、肛門腺絞りをすれば、数日で行動がおさまります
分泌液がたまりすぎると、肛門嚢炎を起こす心配もあるので、肛門腺絞りは月に1回ほどおこないましょう。

心配なケース

心配なのは、おしりに汚れや出血が見られる場合や、炎症、そのほかいつもとは違う様子が見られる場合などです。おしりを触られるのを嫌がる、排泄時に痛がるといった症状を伴うこともあります。
この場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。

チェックポイント9.関節 

健康的な犬

チェック方法

わがままや甘えで見せることもありますが、犬が動くのを嫌がる場合は、病気やケガが潜んでいる可能性があります。
関節のトラブルは見た目ではわからないことが多いため、犬の行動を観察し、実際に触ってみることが大切です。

下記の点がないか、確認してみましょう。

  • 犬の動作は鈍くないか
  • 歩くことを嫌がらないか
  • 歩き方がおかしくないか
  • 段差を嫌がらないか
  • 前脚と後脚を触って痛がらないか
  • 脚の曲げ伸ばしを嫌がらないか
  • いつもと違う座り方をしていないか

心配なケース

関節のトラブルとしては、二つのケースが考えられます。
一つは、外傷や炎症、腫瘍など、なんらかの原因により、後天的に生じる異常。もう一つは、先天的・遺伝的な問題によって生じる異常です。

後天的なケガや病気は予防できる可能性がありますが、先天的なものは予防ができません。
それでも早期発見・早期治療をおこなうことで、犬の痛みやストレスを抑えることはできます。

チェックポイント10.排便 

うんちをする犬

チェック方法

愛犬のうんちは、健康のバロメーターとして大切な指標です。色や形状、回数を見ることで、病気の早期発見につながることもあります。

うんちの色は食べたものによっても多少の差はありますが、基本的には茶色が正常なうんちです。
また、正常なうんちは、ある程度の硬さがあり、処理する際につかんでも形が崩れません。
回数には個体差がありますが、1日1~2回だったのに、急に5~6回に増えるといった場合などには、なんらかの問題が起こっている可能性があります。

色や形状、回数はもちろん、虫などが混入していないか、下記の点をチェックしましょう。

  • うんちが茶色以外の色でないか
  • 血やゼリー状のものが付着していないか
  • うんちが硬かったり柔らかかったりしないか
  • うんちの回数が急に増えたり減ったりしていないか
  • うんちに異物や寄生虫が混入していないか

心配なケース

便秘や下痢は、食事の内容や水分量によって起こることもありますが、下痢の場合は、胃腸炎や寄生虫感染症の場合もあります。
また、うんちが黒色、あるいはゼリー状のものが付着しているときは、上部消化管に出血があったり、胃腸の粘膜に炎症が起きていたり、腸内環境が乱れていたりする可能性があります。

チェックポイント11.排尿

おしっこをする犬

チェック方法

健康的なおしっこであれば、透明な淡い黄色で、あまりにおいもキツくありません。
おしっこの回数は子犬であれば1日あたり7~10回、成犬であれば3~5回くらいが正常です。ただし、おしっこは回数よりも、量が重要です。
健康な犬であれば体重1kgあたり20~45mlのおしっこを一日に排出しますが、それを大きく下回ったり上回ったりするようであれば、なんらかの病気が潜んでいる可能性があります。

下記のポイントがないか、チェックしてみましょう。

  • おしっこの色が濃すぎたり、薄すぎたりしないか
  • おしっこがキラキラしていないか
  • おしっこに血が混じってないか
  • おしっこのにおいがきつくないか
  • いつもより、おしっこの量が少なかったり多かったりしないか

心配なケース

慢性腎不全や糖尿病を引き起こしていると、多飲・多尿になります。一方で急性腎不全になると、おしっこの量が極端に少なくなります。
また、膀胱炎や尿路結石では、頻尿や血尿、尿がキラキラ光るといった症状が見られます。水分不足になると、アンモニア臭がきつくなります。

チェックポイント12.呼吸 

健康そうな犬

チェック方法

種類にもよりますが、犬の正常な呼吸数は1分あたり10~35回程度です。運動したあとや、気温・湿度の高い場所にいると、呼吸数は多くなります。
また、呼吸するときにヒューヒューゼーゼ―といった異音がしないか、よく観察してください。とくに短頭種は呼吸の問題を起こしやすいので、注意が必要です。

加えて、咳やくしゃみの有無も確認しましょう。ときどきであれば問題ありませんが、咳やくしゃみは病気のサインであることも少なくありません。

下記の点がないか、チェックしてみましょう。

  • 運動後や高温の場所でないのに息が荒くないか
  • ヒューヒューゼーゼーなどの呼吸音がしないか
  • 舌の色が白かったり、青紫色になっていないか
  • 咳やくしゃみが出ていないか

心配なケース

犬は基本的に鼻呼吸ですが、息が苦しくなると、口呼吸をすることがあります。呼吸回数がいつもより多かったり、呼吸スピードがいつもより早かったりする場合、呼吸器や心臓、そのほかに関連した病気の可能性があります。

運動後や体温調節のため、一時的に呼吸が速まることはありますが、安静にしても呼吸が戻らないときは、注意が必要です。
また、上を向いて呼吸をするなど苦しそうにしている、咳やくしゃみが続いている、呼吸音に異音が混ざる、舌の色が青や白っぽいといった場合は様子を見ずに、すぐ受診してください。

呼吸器の疾患としては、気管支炎や気管虚脱、心臓疾患には、心筋症や僧帽弁閉鎖不全症などがあげられます。

獣医師に聞いてみた! 犬の健康チェックのQ&A

犬が嫌がるのでしっかりとチェックできない……どうすればいい?
とくに顔周りを触られるのを嫌がるどうぶつさんは多いですが、嫌がっているときに無理に続けようとしても、チェックやお手入れ自体が嫌になってしまうことも多々あります。また無理に続けると、飼い主さまがケガをしてしまうケースもあります。

まずはおやつなどワンちゃんが好きな物を一緒に使いつつ、触らせてくれたらご褒美をあげる、の繰り返しでチェックやお手入れに慣れてもらうとよいでしょう。また、細かい部分のチェックはお家では難しいことがほとんどなので、どうしてもお家でチェックができない場合も含めて、定期的に動物病院にてしっかりと身体検査をしてもらうことがおすすめです。
健康チェックで問題がなければ、定期健診の必要はない?
健康チェックと定期健診は別物です。定期健診は、触診や視診、聴診のみではわからない問題点を見つけられることが多く、血液検査やレントゲン検査、超音波検査などが含まれることが多いです。

お家での健康チェックのほかに、動物病院での定期的な健康チェック、そして7歳未満の子は1年に1回、7歳以上はできれば半年~10カ月に1回は全身的な定期健診もされるとより安心でしょう。

獣医師からのメッセージ

ワンちゃんの健康状態の変化に一番気づきやすいのは、普段一緒にいることの多い飼い主さまです。長くずっと一緒にいられるように、普段からワンちゃんとのスキンシップも兼ねて、健康チェックをするようにしましょう。また、気になることがあれば、すぐにかかりつけの先生に相談してくださいね。

まとめ

犬は、体の不調や痛みを言葉で伝えることはできません。また、本能的に病気などの症状を隠す傾向にあります。
そのため、病院に連れていったときには、すでに病気が進行していたというケースも少なくありません。
愛犬の様子の異変にすぐに気付いてあげられるように、習慣的に健康チェックをおこないましょう。