犬の健康診断の必要性 

診察 犬
獣医療の進歩や飼育環境の改善により、犬の長寿化が進んでいます。また、ペットではなく、家族の一員という考えも広まったことにより、犬の健康管理に気を配る飼い主が増えています。

犬は人間のように言葉で体の不調を訴えることができません。また、本能的に不調を隠す傾向があります。そのため、飼い主が異常に気が付き、病院に連れて行った段階ではかなり症状が進行しているというケースは少なくないのです。

愛犬の健康寿命を延ばすためには、日頃の健康管理に加え、病気の早期発見が大切になります。

健康診断が受けられる場所

犬の健康診断は、動物病院でおこなうことができます。

動物病院によって健康診断の内容は異なるので、かかりつけの動物病院で健康診断が受けられるか、どのような検査をしてもらえるのか、確認しておきましょう。

健康診断を受けはじめる時期と頻度

1歳を過ぎたら、年に一度は健康診断を受けるようにしましょう。

シニア期に入る8歳以降は人間と同じように体に不調が現れやすくなるため、年に2回の健康診断が安心。

しかし、前回の健康診断で何もなかったからといって、油断は禁物です。
半年後の健康診断で病気が見つかることもあります。日ごろから愛犬の様子に気を配りましょう。

可能であれば狂犬病や混合ワクチン接種と一緒のタイミングで受けるようにすると、忘れることがないのでおすすめです。

犬の健康診断の内容

問診票 聴診器
病院によって検査内容に違いはみられるものの、基本的に犬の健康診断は人間の健康診断と同じイメージです。

検査内容によるプランを用意する病院や、問診等の結果からその子その子に合わせて検査内容を決める病院もあります。

また、検査内容をある程度プランとして準備している病院でも、年齢や既往歴、体調、問診の結果や飼い主の希望を踏まえて検査内容を追加することもあります。

ここでは、健康診断の主な検査内容を紹介します。

問診

最初におこなわれるのが、問診です。最近の犬の状態、飼い主が気になっていることなどを医師に伝えます。診断の手がかりを見つける目的があるので、できるだけ具体的に伝えることが大切です。

気になる行動や症状があれば、下記の3点に注意して、伝えましょう。
  • いつから
  • どのようなときに
  • どのくらいの頻度で

伝え忘れが心配ならメモを取っておいてもいいですし、伝え方が難しい場合は動画や写真に記録しておくのもおすすめです。

触診・視診・聴診

獣医師の五感が頼りとなる診察で、この段階で見つかる病気は少なくなく、非常に大切な検査です。目や耳、歯の状態などを見てチェックする視診全身を触りながら肥満度や皮膚の状態、しこりの有無を調べる触診心臓や呼吸音を聞いて、心臓や肺機能に異常がないかを調べる聴診。

ほかにも、においから病気が発覚することもあります。

尿・便検査

尿検査では腎臓の機能、尿結石の有無やその種類、そのほか泌尿器系のトラブルがないかどうかなどを調べることができます。

便検査では肉眼で便の性状のチェックをおこなうと共に、顕微鏡で寄生虫卵の有無や腸内細菌のおおまかなバランスなどを調べます。

検査は自宅で採取したものを持参するか、もしくは動物病院で採取しておこないます。病院によって方法が異なるので、あらかじめどのような方法で検査するか確認しておきましょう。

レントゲン検査

レントゲン検査は、人間と同じようにX線を照射し、撮影することで、体の中の様子を把握する検査のひとつです。

体の外側からは見ることのできない内臓の大きさや形、位置だけでなく、骨や関節の異常などを調べることができます。

超音波検査

超音波検査では、レントゲン検査では観察できないような、内臓の細かい形やその中の状態、動きから、太い血管の血液の流れなども確認できます。
また、内臓にある腫瘤やできものなども、エコー検査ではじめてわかることも多いです。



問診や血液検査の結果でより詳しく調べる必要がある場合や、健康診断に含まれない検査で判明する病気の可能性がある場合は、愛犬の健康状態に合わせてさまざまな検査を組み合わせることもあります。

そのため、「最近足の調子が悪そうなので、詳しく診てほしい」「シニアなったので、甲状腺の検査をしたい」などの要望や「おしっこの量が多い(少ない)気がする」「最近すぐに息切れしているように感じる」など気になる症状があれば、些細なことでも獣医師に相談してみましょう。

シニアになったら検査内容の相談を

高野 航平

年齢に応じて取り入れていきたい検査で「甲状腺の検査」と「心臓の検査」があります。

この2つはどうしても、若いときには視診・触診・聴診で異常がみられなければ、検査する機会も少ないことが多いです。とくに甲状腺関連の病気はシニア期特有のものが多いと言われています。

シニアの年齢になってきたら、先生と相談しながら、必要に応じて取り入れていくとよいでしょう。

犬の健康診断の費用

費用
日本獣医師会「平成27年 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査調査結果」によると、犬の健康診断(1日ドック)の費用は1万4,021円が平均値です。

ただし、病院や検査内容によって数千~数万円までと大きく幅があり、1日がかりでおこなう健康診断はそれなりに費用がかかります。

また、健康診断はペット保険の対象外であることが多いです。念のため、加入している保険の内容を確認しておきましょう。

愛犬の健康は何にも代えがたいものではありますが、費用がどのくらいかかるのかは気になるところ。費用については動物病院に確認しておくと安心です。
参考文献
日本獣医師会 家庭動物診療(犬、猫)の診療料金実態調査(http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin_h27/#page73

犬の健康診断の注意点

犬 聴診器
人間と同じように、犬も健康診断を受けることで病気の早期発見や予防につながります。ここでは、健康診断を受ける際に気を付けたいポイントを説明します。

予約は必須

健康診断を受ける場合は、必ず予約をしましょう。
予約の際に、尿検査や便検査は自宅で採取して持参するのか、絶食が必要かどうか、検査の方法や事前準備などについて案内されることが多いので、よく確認しましょう。

また、先に愛犬の様子を伝え、健康診断を受けたい旨を相談すると、獣医師が健診内容を決める手掛かりにもなります。

便、尿は新しいものを

高野 航平

便や尿は、なるべく新しいものを持って行くといいでしょう。提出方法について指定がある場合は、従っていただければと思いますので、必ず提出方法を先に確認していただくことをおすすめします。

絶食を指示されたのに間違ってごはんをあげてしまった、便や尿を待ち構えていたのにしなかった、といった場合は、お早めに動物病院にお申し出いただきたいです。

必要に応じて日にちや時間をずらしたり、病院で便や尿を採取する方に切り替えたりする可能性もあります。

普段お世話をしている人が連れていこう

犬の普段の様子を知ることは、獣医師が問診や検査の内容を決めるうえで重要な材料となります。普段お世話をしている人がこの点をしっかり伝えることができれば、獣医師の正しい判断の助けとなるでしょう。

フードの種類と量、おやつの種類や頻度、おしっこやうんちの状態などをしっかり説明できるのは、やはりメインで愛犬のお世話をしている人です。

獣医師に犬の様子を詳しく説明できる人、獣医師からの質問にしっかり答えられる人が連れていくようにしましょう。

治療に対する決定権をもつ人が一緒に行く

検査が追加になる、あるいは病気が見つかりすぐになにかしらの治療が必要になるなど、その場で飼い主が判断しなければならないケースもあります。

健康診断には愛犬の様子を一番よく知る人が連れていくべきですが、費用面の負担を考慮する必要もあります。検査や治療、費用の負担について決められる人もいるとよいでしょう。

獣医師からのメッセージ

実際に、定期的に検査をしていたことで病気の早期発見に繋がったケースは多いです。

また、健康なときにあえて検査をしておくことで、その子の健康時の状態、血液検査の数値などが把握できるため、いざ具合が悪くなったときに判断の指標にもなります。何もないときこそ、健康診断をうけておくとよいでしょう。

健康診断のときには、どんな小さなことでも先生に気軽にご相談ください。何気ない一言で追加した検査で、重篤な病気が見つかるケースも少なくありません。

健康診断を定期的に受けることで、飼い主側の意識も引き締まります。

いつまでも大切な家族と一緒に元気に過ごすためにも、定期的にきちんと検査をしてもらうといいですね。

まとめ

犬 人 手
犬も、年齢を重ねるに連れて体調を崩したり病気にかかったりすることが増えるものです。大切な愛犬の健康を守るためにも、1歳を過ぎたら年に1度は健康診断を受けましょう。
健康診断の内容については獣医師に相談し、適切な検査が受けられるよう普段から愛犬の様子をしっかり観察してくださいね。